SFCスピリッツ
「人」と向き合うこと
国連人口基金(UNFPA)ジンバブエ国事務所 Program Analyst: Aid Effectiveness-Advocacy/Resource Mobilization
2005年看護医療学部卒業、2005年〜2008年国家公務員共済虎の門病院(血液科)勤務、2010年東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻(専門職学位過程)修了
SFCでの学生生活はタッチフットボール(BREAKS)の練習に明け暮れ、真っ黒に日焼けし先生方に驚かれながら看護医療学部の授業や実習に臨んでいた日々が懐かしく思い出されます。そこで出会った多くの仲間とは目標に向け切磋琢磨し、どのような場面や環境に置かれてもそこで自分の持てる最高のパフォーマンスを出せるよう努力する、という社会に出てからもとても大切だと感じることを自然と学んでいたように思います。
その中でも看護医療学部での学びは特に「人」をあらゆる視点から見つめ、向き合い、自分の考えを伝え行動に移すことの重要性であったと振り返ります。米国ミネソタ州メイヨークリニックでの研修も含めた実習では国内外のあらゆる社会で「人」が直面していることにどのように向き合い、より良く出来るかを考え、さらにはそれらを実践することの大切さを学びました。4年次のプロジェクトでは山下香枝子先生に指導を仰ぎ、どのように支援をすれば患者さんの「自己決定」が実現できるのかについて考えを深め論文にまとめました。
あらゆる学習の中で、政策や制度、システムを整えることの大切さを感じ、広範囲な人々に対して健康を届けられる公衆衛生の分野に興味を持ちましたが、まずは学部時代に学んだ基礎である1対1のケアに重点を置きたいと考え卒業後の進路は病棟看護師としてスタートしました。そこで病気と闘う患者さんの姿から命の尊さを肌で感じ、ベッドサイド看護に従事しながら日々自分やチームに何ができるかを考え実践できるよう努めました。しかし、それと同時に日本国内では環境が整っていることで救える可能性のある命であっても、世界に目を向けると、生まれた国が違うだけで実現できる健康レベルに違いがあることにも疑問を覚え始めていました。そこで、より広い視点で保健や医療、「人」をもう一度捉えたいと考え公衆衛生を学ぶために大学院へ進学しました。そこで幼少時に育ったフィリピンで母子保健の研究に取り組み、またWHO西太平洋地域事務所でインターンシップを経験し、1人ひとりと向き合いながらも政策レベルで人々の健康を考えることの重要性を感じ、現在は外務省のJunior Professional Officer制度を通して国連人口基金(United nation Population Fund: UNFPA)ジンバブエ事務所にて勤務しています。
ジンバブエでの業務は、政治的にも経済的にも様々な危機を乗り越え、さらなる発展に向け前進しているジンバブエの人々に対して、政府が掲げる保健政策をもとに国連として適切な情報やエビデンスに基づいたプログラムの実施を支援しています。具体的には、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、HIV/AIDS予防、ジェンダーの平等の分野で人口統計データを用いながら、最も効果が上がるよう様々な援助機関と協調しながら2015年までに達成が望まれているミレニアム開発目標の実現を一人ひとりの健康を念頭に置きながら目指しています。
このようにミクロでもマクロでも、どのような立場でも「人」を適切に捉え看護としての視点を持ちながら向き合う基礎づくりが看護医療学部での教育であったと考えています。まだまだ通過点に過ぎないですが、このように自分の思いを1つひとつ形にできているのも、常に高い理想を持ち続けているSFCの仲間からの刺激と共に、私の関心と興味を最優先に指導してくださった教職員の方々のお蔭であると思っています。「人」と向き合うためには、時には自分自身と向き合うことも必要であり、それらを可能としてくれたSFCの環境、そしてそこでの出会いが私を新しい世界へ躊躇なく導き、またそこで挑戦し続ける力をくれています。
(掲載日:2011/04/20)