SFCスピリッツ
午前10時のイス取りゲーム
前田好雄さん
鉄道情報システム株式会社 ネットワークシステム部
1995年環境情報学部
毎日午前10時、JRの駅(みどりの窓口)や旅行会社では、「1ヶ月後に発車する列車の指定席」を取るために、係員が時報を合図に端末のボタンを一斉に押しはじめます。その数は約8000台。年末年始や行楽シーズンだけでなく、人気の高い列車の指定席などは、わずか数秒で売り切れてしまうのですが、希望の席が確保できるかどうかは、このボタンを押すタイミングにかかっているのです。それはまさに全国規模の「イス取りゲーム」―私の所属する鉄道情報システム株式会社(JRシステム)が、その幹事役をしています。
最近は、時刻表の背表紙広告で『日頃からいつも身近にあって意識されない「空気のよう」であり続けたい』と地味にアピールしていますが、会社の知名度はまだまだ低いです。
弊社の業務はJR各社や旅行会社向けが主ですが、皆さんの身近では、Webサイト「JR CYBERSTATION」でJRの空席案内や新幹線運転情報を提供しています。また意外なところでは、新聞やWebサイトにある「スキー場の積雪情報」や「桜などの開花情報」などの多くが、実は弊社にて取りまとめた情報を元に作成されているものです。これらは携帯電話コンテンツ「週末♪行楽なび」としても提供中です。
私は小さいころから鉄道が好きで、鉄道にかかわる仕事をしたいという想いだけで入社を決めました。1995年の入社以来、端末とホストコンピュータを結ぶネットワークシステム(JR-NET)の構築を中心に、開発・保全・監視・設計・運用当直・品質管理などの業務を経験してきました。
鉄道関連のシステムは、常にお客様から「安全」「正確」な高信頼性が求められている一方で、新技術を取り入れながら快適なサービスを提供し続ける必要があります。ダウンをいかに防ぐか、あるいは最小限にとどめるかを課題に、何重もの安全対策を施しながら仕上げていきますが、些細なミスが大きな事故へつながることを目の当たりにしてきました。現在は、エンジニアとは別の視点からシステムを見つめ、大きくなる前にミスを取り除く、そんな仕事をしていますが、「日常社会を支えている」という使命感(または思い込み?)を原動力に日々奮闘しています。
そして、今日も午前10時を迎え「イス取りゲーム大会」が順調に始まりました。システムの安定稼動という使命を果たした私たちが、直前の緊張から解放され、ささやかな達成感を得るひとときです。
旅行や出張の際に、いつもより長めのきっぷを手にした時、そこに空気のような私たちがいることを思い出していただけると大変嬉しいです。
鉄道情報システム株式会社
http://www.jrs.co.jp/
(掲載日:2009/02/25)