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Magazine
2009.12.16

幸せの黄色いエプロン

SFCスピリッツ

幸せの黄色いエプロン

安里美幸さん
株式会社東ハト マーケティング本部 コーポレートブランド室
2001年総合政策学部卒業

「ケーキ屋の黄色いエプロンのお姉さん」。大学2年〜卒業時まで、湘南台駅西口にある 「パティスリー・コムアンプロヴァンス」でアルバイトをしていた当時の呼び名です。ケーキ好きが高じて始めたのですが、商品に囲まれて過ごす時間は勿論、ケーキを選ぶお客様を見ることが何より好きでした。ショーケース越しに見る、お客様のわくわくキラキラした目。こうやって商品を選んでくれているのか、と。ケーキ1つでも、クッキー1枚でも、目的を持って選んでくれている。よく考えるとすごいことだと思いながら、買われていくケーキの背中を見るのも好きでした。

…卒業後、マーケティング職を主として菓子業界に携わって参りましたが、2年ほど前に、ある雑誌の一説に目がとまりました。「あなたがその商品を買うことは、その商品が続いて欲しいと1票を投じることだ」。それまで「選ぶ」ということに対して「それをとる」という意識しかなかったのですが、以降「(他のものをそぎ落として)それをとる=それが欲しい」という認識がとても強くなりました。現在は、広報及び広告宣伝を担当しておりますが、未来永劫愛されるお菓子のブランド育成に携わっていければと考えております。

…当時2つの研究会に所属していましたが、そこで得たものは学問以外にもたくさんありました。マーケティング及び消費者行動は「(その商品・ブランドが)好きであること」が基点だとお教え頂いた桑原先生。履修科目の課題で、ケーキに対する思いを綴ったレポートをお褒め頂いたことこそが、マーケティングに興味を持ったきっかけです。渡辺吉鎔先生の韓国語研究会では「興味のあることをとことん追い続けなさい」というご指導のもと、「韓国と日本のケーキについて」を自主テーマとして、歴史・文化含め自由にレポートさせて頂きました。「ケーキ」を「景気」と勘違いされた笑い話もあるほどです。当時SFCという未知なる世界に気負っていた自分がいて、「SFCらしさ」を勝手に解釈し悩んだ時期もありましたが、お2人に考え方や価値観を理解・共感して頂いたことはとても嬉しく、励みになりました。

同じことが、友人たちにも言えます。当時も今も、みんな私にとって???な難しい仕事や活動をしており、同じ学部出身ながらも多種多様に活躍しています。業界こそ違えど、やっていることや目標は一緒と考え、互いに理解尊敬しあえる。他大学や学部にはない、すばらしい関係性及び環境だと思います。今思うと、それが本来の「SFCらしさ」かもしれません。

バイト先のおいしいケーキや、私の(怪しい)手づくりケーキを食べながら「おいしい〜!」と最高の笑顔を見せてくれた、先生方、友人たち。そもそものきっかけを与えてくれた、アルバイト先の蛭町シェフ、そしてSFCに感謝すると同時に、たくさんの幸せを与えてくれた黄色いエプロンを誇りに思います。

「♪本当のしあわせは目に映らずに 案外傍にあって 気付かずにいたのですが♪」…大好きな椎名林檎「幸福論」の歌詞です。お菓子って多分そうなのです。嗜好品じゃなく、必需品。

おこづかいを握りしめてたいせつに買いにいったお菓子も
いつからから自分で好きなだけ買えるようになって。
でもやっぱり大事に選んでいます。自分のために、誰かのために。
お菓子。「お」がつく。たいせつなものだから。

今でもよく、店頭に行ってはお菓子棚の前にいるお客様の背中を見ています。携わった商品はどういう風に買われていくのだろう、と。あのケーキの背中を見ていた頃と何も  変わりません。スーパーやコンビニの棚で視線を感じたら、私かもしれませんのでご注意を・・・。

食べたい時間がおやつの時間。みなさんは今日どんなおいしいお菓子を食べていますか?

(掲載日:2009/12/16)