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2009.03.25

【ひとの力】を活かす、1人ではできない仕事〜ゲーム開発の現場から

SFCスピリッツ

【ひとの力】を活かす、1人ではできない仕事〜ゲーム開発の現場から

馬場保仁さん馬場保仁さん
株式会社セガ 第一CS研究開発部 第二企画セクション プロデューサー
1994年環境情報学部、1996年政策・メディア研究科修士課程

ゲーム開発の世界に飛び込んで、はや10年以上が経過しようとしています。
SFC時代に、グループワークや研究会での活動をしたことから「仕事にするなら、集団で何かを生み出すことがしたい」と思っていました。

集団での商品開発
人材マネジメント

これこそが、学生時代、私が取り組んでみたいと思っていたことでした。そのような意味では現在従事しているゲーム開発というのは、そのどちらをも味わうことができる、1粒で2度おいしいではないですが、私自身にとっては、非常に魅力的な仕事となっています。「集団での商品開発」という面では、企画を立ち上げる時、ゲームの1つ1つの遊び方を考えていく時、デザインやサウンドのアイデアを出していく時、露出しやすい・フックとなりやすいものを埋め込んでいく時、プロモーション・パブリシティの展開を考えていく時など様々な局面で、「アイデアを出す」必要がでてきます。その時に、1人のアイデアではない、皆でアイデアを出し合い1つのものに昇華させていく、「ケミストリーを感じる瞬間」は筆舌に尽くしがたい感動があります。
「コア」となる部分は必ずしも合議で決めることが良いとは限りませんが、そこから派生する方向性やディテイルの部分は、より大勢の経験や価値観がクロスすることで「1人ではつくりだすことのできないエネルギーと面白さ」を生み出すことにつながっていきます。1つ1つのピースが組みあがっていき、最終形のフレームがはっきりとイメージできてきた時の喜びは大きいです。これからこの業界を目指そうと思う方には学生時代にいろいろな体験をして「自分ならではのアイデアの種」となる経験をたくさんしておいていただきたいと思います。これは、ゲーム業界に限らず、どんな仕事でもそうだと思います。

次に、「人材マネジメント」という点では、ゲーム開発は、ゲームの種類や規模によっても異なりますが何十人という単位の人間で、1つのチームを構成しておこなわれます。

様々な職種の比率
各自に与えるタスクの大きさ
納期と確認
人の配置と組みあわせ

などなど、これらを「効果的」に実践することができた時や、結果に結びつけることができた時のやりがいや実感は、たまらないものがあります。もちろん、スタッフ1人1人は、人間であり、パートナーであり、決して「道具」ではないわけです。相手に敬意を表しながら、その人の「できること」、「できないこと」、「未来への可能性」を考えて、様々なミッションをお願いしていくわけです。そのための「準備」、そして分担した後の「確認」、これをどれだけ密に、そして効率よくおこなえるか、そのための時間をいかに捻出するか、がポイントとなってくると思います。そのためにも、「人材育成」というのは非常に大切なミッションであるということを、強く実感する毎日です。

ですが、案外この業界を目指そうとする方々の指標となるべきテキストがない、そしてこの業界で従事していても、いまだ徒弟制度的な色が強いために、3年目くらいまでの人たちの道標となるべき「言葉」がない、という点から、昨年、私同様にSFC卒の山本貴光氏(1994年環境情報卒)と共著で本を執筆いたしました。

●「ゲームの教科書」(筑摩書房・ちくまプリマー新書)
馬場 保仁(著)、山本 貴光(著)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480688026/

ゲーム業界に限らず「仕事」に取り組む時のプロセス、考え方に役立つ方法、言葉を詰め込みました。ご覧いただけますと幸いです。

さて、そんな中、現在、最新の商品を開発しております。

●「プロ野球チームをつくろう!2」(NintendoDS)
2009.5.21 On Sale!
http://www.yakyutsuku.com/

という商品です。10年以上続くシリーズで、プロ野球を題材にした球団経営のシミュレーションゲームです。
10年も続くシリーズで、新規性へのチャレンジと、長年楽しんでいただいている方への安心感という、やや二律背反しそうな事象を満たすという難しいミッションに立ち向かっています。
このシリーズの集大成的な作品になっていますし、私自身もこれまでの仕事で得てきた経験や知識、そして愛情をすべて注いで開発をしております。ぜひ、皆さん、機会がございましたら、手にとって遊んでいただけると幸いです。

エンタテインメントは、不況も何も関係有りません。楽しいことがなければ、人間は生きていけないからです。
新しい市場、ジャンルを創造していくことも可能です。まだまだ、未開拓の荒野が目の前に広がっています。
「遊び」の可能性は無限大です。これからも、仲間たちと共に、情熱と信念をもって他者の琴線を揺さぶるゲームを開発していけるよう頑張っていきたいと思います。

(掲載日:2009/03/25)