SFCスピリッツ
ワクワク感に賭けてみよう!
小野田哲弥さん
産業能率大学情報マネジメント学部准教授
1999年総合政策学部卒業、2001年政策・メディア研究科修士課程、2007年同博士課程修了
「バンクーバー五輪、感動指数1位は真央、知名度上昇1位は国母-産能大調べ」というニュース記事を、どこかでご覧になった方もいるかもしれません。北京五輪時も「感動度・北島、びっくり度・上野、ブレイク度・太田」というリリースをしたので、「結果を予測できたんですか!?」と驚かれもしますが、なんのことはなく、最初から“全員に注目”していただけです。
博士課程のとき、厖大なタイトル数のマンガ分析やゲーム分析を行っていた経験からすると、バンクーバー五輪の日本代表選手94名はもとより、北京代表の339選手でさえ、あえて項目を絞り込むほどの人数には感じませんでした。ですがSFCで培われたこの感覚、外から見るとやや異色に映るようです。
「どこが情報の氾濫だ。俺からしたら、まだまだ少なすぎる」が、熊坂賢次教授の口癖です。そんな師匠は、Amazon.co.jp(2000〜)もWikipedia(2001〜)もない頃に、それらを融合したようなサイトを自前で作るという、途方もない計画を打ち出しました。そのプロジェクトに従事していた私は、修士時代、熊坂研内で「奴隷隊長」と呼ばれていました…。後輩たちと丸2年、数十万件のアイテム情報を“タコ打ち”する作業に明け暮れていたためです。
ですが、過酷な入力作業があったからこそ、今日の集合知のありがたみを人一倍実感していますし、机上論ではないロングテール論も身についていると思います。実務的な成果としては、テレビ朝日が運営する『リサーチQ』に実装されている視聴質指標「Qスコア」がありますが、この指標の算出式は、毎日5,000人から寄せられる約10年分、合計17万番組に対する“視聴者の声”をもとに作成しています。サンプルに無数の深夜番組を含んでいるところが私らしさであり、それは深夜のバラエティ番組を重視するテレビ朝日側のニーズとも合致していました。
SFC入学年次は「インターネット元年」といわれる1995年で、前年のオープンキャンパスで抱いた“ワクワク感”が、今でも研究を行う際の根底にあります。とにかく「“何か”面白いことが起きそう!」という予感に賭けて研究を行っています。冒頭のオリンピック調査もそうですし、昨年実施した『ドラクエⅨ』調査もそうでした。そして最近、共同研究を始めた株式会社メディネットグローバルの『Ullet』にも強くそれを感じています。みなさんもぜひ一度、このサイトにアクセスしてみてください。きっと、私のいうワクワク感がご理解いただけると思います。
勤務先の産業能率大学では、それこそオープンキャンパスでの模擬授業も担当しますし、『問題発見ゼミ』『問題解決ゼミ』という名の、SFC色の強い科目も担当しています。教え子たちが全員ノートPCを持ち、“グルワ”や“プレゼン”に励む姿を頼もしく思う反面、母校のSFCには、他大学の追随を許さないくらい、さらに先端を突き進んでほしいという願いも同時に抱きます。SFC在校生のみなさんには、知的ワクワク感を大切に、ユニークで冒険的な活動にどんどんチャレンジしていってほしいですし、私も未来を先導するSFCの卒業生の一人として、これからも果敢にトライを続けていこうと思います。
産業能率大学・小野田ゼミのミーティング風景(立っている人物が筆者)
(掲載日:2010/04/21)