SFCスピリッツ
日本語に魅了された学生たち:バルセロナで日本語を教える
福田牧子さん
バルセロナ自治大学 翻訳通訳学部東アジア研究科 (Universitat Autònoma de Barcelona, Facultat de Traducció i d’Interpretació, Estudis de l’Àsia Oriental) 非常勤講師
1998年環境情報学部、2000年政策・メディア研究科修士課程
2003年の9月、どことなく見慣れた風景の中で私の教師生活が始まりました。バルセロナ大学のカタルーニャ言語学科*の博士課程を終え、ちょうど論文のための調査を始めていた頃でした。バルセロナ郊外のBellaterraに位置するバルセロナ自治大学(以後UAB)**は二駅分にもまたがる広大なキャンパスに11学部を有し、学部生だけでもおよそ3万名が学んでいます。豊かな緑に囲まれたキャンパス、うちっぱなしのコンクリートの建物、そして何より時折漂う「牛のにおい」(獣医学部が発信源と思われます)は母校、SFCを彷彿とさせます。
私が勤務しているのは、翻訳・通訳学部内に設置された東アジア研究科です。2003年9月に第二学士課程としてスタートし、本年9月には4年制に移行する予定です。東アジア研究科には日本コースと中国コースがあり、それぞれの言語が必修になっています。
授業は基本的には現地の公用語であるカタルーニャ語で行っていますが、学生に少しでも日本語を聞くことに慣れてもらう目的で、簡単な指示等はすべて日本語で行っています。学生は鋭い観察力を持っており、教師の口癖をしっかりと把握して時には「ネタ」にされることがあるので、うっかりしたことは言えませんが。
日本人との交流も盛んで、年一回のバルセロナ日本人学校と交流会をはじめ、日本からの交換留学生との交換授業、そして最近ではSFCのスペイン語を学ぶ学生さんたちとマドリッド・コンプルテンセ大学付属語学学校の学生さんたちとインターネットを通じて合同活動なども行っています。2月には一部のSFCの学生さんたちが本校に来てくださり、学生たちも未だ見ぬ友との初の対面に大喜びでした。
かつて、スペインで日本語は第二外国語としてはマイナーな存在でしたが、近年のマンガを初めとする日本文化ブームのお陰で学習者が年々増えています。私が UABで初めて受け持ったのはわずか5名の学生でしたが、現在では毎年20名ほどの学生が日本語を履修しています。人数は決して多くはありませんが、彼らの日本語に対する好奇心・情熱は並みならぬものがあります。クラスでの熱心な様子(金曜日・休み明けは除く)、そして一種の連帯感のようなものは、かつて私がSFCのインテンシブ・コース(マレー・インドネシア語)で経験した、あの独特な雰囲気を思い起こさせます。まるで一種の魔法にかかったような…。今、私はそれを「教える者の立場」から感じています。当時マレー語を担当していた野村先生、サイフル先生、根津先生が作り出していたあの「魔法」のような感覚を再現できるようになることが私の当面の目標ですが、まだまだ道は長そうです。
最近では教え子たちが次々に日本へ旅立って行っています。研究の道を志す者、日本語を生かした職に就く者と道は様々ですが、いつの日か皆様のもとにたどり着いた暁には、どうぞ可愛いがってやってください。
*カタルーニャ語とはカタルーニャ自治州独自の言語で、公用語でもあります。
**Bellaterraはメインキャンパスで、他にもSabadellやバルセロナ市内にもキャンパスがあります。
Universitat Autònoma de Barcelona
http://www.uab.cat(カタルーニャ語・スペイン語・英語)
(掲載日:2009/04/22)