MENU
Magazine
2009.07.21

47都道府県に地域と元気をつなげるビタミンを

SFCスピリッツ

47都道府県に地域と元気をつなげるビタミンを

西田みづ恵さん
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程1年、VITA+ 代表
2007年総合政策学部卒業、2009年政策・メディア研究科修士課程修了

2005年4月、大学3年生の時に、私は、飯盛研究室内で、任意団体VITA+(ビータプラス)を立ち上げました。

私には、大学に入る前からずっと抱き続けてきている想いがありました。

情報が溢れ、様々な価値観が並存するこれからの社会において、豊かな人生を送っていくためには、自分で考える力、行動する力(VITA)、そして、人とつながる力(+)が大切であるということ。そして、できるだけ幼いころからその力が身につけられる場を創りたいということです。
なぜ、場づくりなのでしょうか?それは、人は一人ではなく、人との関係性の中で力や物事に取り組む姿勢、考え方を身につけていくのではないかと考えているからです。

そして、地域活性化に取り組む飯盛先生と出会い、この思いを実現させる機会をいただきました。

地域は、バブル崩壊以降、自治体や企業の力では解決が難しい問題を抱えています。そして、地域にある情報などの資源を活かしていくために、また、様々な立場や価値観がある地域で問題を解決していくためにどのようにすればよいのか、その解決策が求められています。

そこで、私は、解決策の一つとして、「ケースメソッド」という手法に注目しました。ケースメソッドとは、1908年、ハーバード大学経営大学院において導入されたディスカッションの方法です。実際の出来事を題材にしたストーリー風のケース教材を用いて、自分が当事者だったら問題をどのように解決していくのか参加者全員で話し合います。そうすることで、問題発見解決や意志決定の力など実践力が身につけられると言われています。
しかし、2005年当時、この方法は、やっとSFCの國領研究室などに導入されたところで、それより下の年齢層への実践例は見つかりませんでした。

そこで、私たちは、まずは高校生対象に、教材や話し合いの方法を工夫し、「高校生ケースメソッド」を開発してきました。題材は、高知県の「NPO法人砂浜美術館」や道の駅「ビオスおおがた」、佐賀県の「佐賀県インターナショナルバルーンフェスタ」、和歌山県の「熊野古道の語り部」、「NPO法人えこなびと」など、主に地域のまちづくりなどの活動を扱い、VITA+の学生メンバーが取材をして執筆します。その教材を高校生に読んできてもらい、「自分が主人公の立場だったら」という視点で、問題やその原因を考え、解決策やそれを実践するための工夫を、大学生がディスカッションリードをしながら話し合っていきます。

現在まで、高知県、佐賀県、和歌山県、福井県で、計27回の実践を重ね、約500名の高校生と「高校生ケースメソッド」の場を共有してきました。その結果、様々な考え方があることや自分から動く大切さへの気づき、地域に対する興味の向上などの効果が表れてきています。さらに、実践だけではなく理論研究も行い、今後、どのようにしたらこの取り組みが地域内で運営できるのか、そのメカニズムの構築も目指しています。

さらに、この4年間、VITA+内でも、開発、実践を経験し、成長していく大学生が20名近く生まれてきています。つまり、地域の高校生のためにと思って、その場を創ってきた大学生のためにもなっている、まさに「半学半教」です。それは、答えは一つではない、参加している全員が主人公であるという考え方を持つ「ケースメソッド」によるものだと私は考えています。

今年からは、自分の地域でVITA+を立ち上げたいという大学生や学校の先生、地域の社会人の方々をサポートさせていただき、各地にVITA+を広めていきたいと思っています。

私の夢は、「地域と元気をつなげるビタミン」のような効用をもたらす仕組みやネットワークを、47都道県に広めていくことです。

2007年度VITA+メンバー
2007年度VITA+メンバー、前列向って右から2番目が西田さん

飯盛研究室:http://isagai.sfc.keio.ac.jp/index.html

(掲載日:2009/07/21)