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2008.09.17

ハイテクを支える通信インフラは職人芸の世界

SFCスピリッツ

ハイテクを支える通信インフラは職人芸の世界

田原裕市郎さん
KDDI株式会社
2001年環境情報学部、2003年政策・メディア研究科修士課程

今やインターネットは社会を支えるインフラの一つとして根付いています。皆さんは、最新の通信機器やソフトウェアがそこで使われていることをなんとなくご存知のことと思います。しかし誰がどんな風に運用しているのかと聞かれると分からない方が多いことでしょう。私は現在、KDDIでネットワークオペレーターとして、インターネットが正常に使えるように働いています。

オペレーターの仕事は、ネットワークが正常に動いているときは、あまり大変ではありません。しかし何か問題が発生すると状況は一変します。問題発生に気付くには、2つのパターンがあります。1つは通信会社の監視システムでエラーを発見した場合、もう1つはご利用者様からの苦情が入った場合です。前者のケースでは、発見と同時に問題箇所が判明するのでマニュアル通りの対応でサービス復旧が可能です。しかし後者の場合は違います。監視システムが発見できないような問題は、オペレーターの勘と経験が試される時です。これは医者が患者の症状から病気の原因を探る作業と似ています。しかし医学と違って、オペレーターに必要な知識を表した書物などはありませんし学校もありません。

SFCでは、講義のほとんどが○○学ではなく○○論という名前です。私が学生の時に「未だ体系化されていない新しい学問領域だから○○論なのだ」と教わりました。企業には○○論にさえなっていない、明文化されていない暗黙知というものが大量に存在します。これはノウハウとも呼ばれます。全世界に存在する書物は人生を掛けても読破できない量が存在しますが、書物になっていない知識というものは、それを圧倒的に上回る量で存在しています。日々の業務を行いながら、ネットワークオペレーターに必要な知識を○○論にすることができないだろうか、どんな方法があるだろうかと思いを巡らせています。

(掲載日:2008/09/17)