SFCスピリッツ
SFCスピリッツ・三神万里子さん
三神万里子さん
ジャーナリスト・NHKビジネス未来人キャスター・信州大学経営大学院講師・漫画家
1994年環境情報学部、会田一雄ゼミ、KSST(水泳サークル)
私の働き方は少し変わっているかもしれません。大学卒業後、初めから独立開業していますし、職業名が四つあるのです。経済・経営分野のジャーナリストとして日米の雑誌や新聞、書籍の世界で取材・執筆をし、キャスターとしてNHKの経済番組で解説や企画提供をしています。信州大学の経営大学院では地方都市の産業振興を教えており、漫画家としては人事や社会保障、新市場などを解説するギャグ漫画を描いています。また、職業ではなく職務という区分では、国や自治体、テレビ局の委員といった仕事をしています。
これらはばらばらに見えるかもしれませんが、最終的なアウトプットの形が違うだけで頭の使い方は一緒です。同様に、インプット――取材や調査・研究――の守備範囲も旧来の分類に則っていません。産業の規模や組織の種類、国を問わず、お目にかかる方の職業や役職も多様です。産業廃棄物の処理場や途上国の地雷源、米国系の金融機関やコンサルティング会社、日本の重厚長大産業も農家も、世の中の問題点がそこに凝縮していたり、解決先が登場していたりすれば、情報価値があると判断して現場に伺います。
政策に関わる仕事もメディアに関わる仕事もしていますから、この意味では「SFC的」なのかもしれません。
SFCの授業には理系と文系の境目がなく、総合政策学部も環境情報学部も自由に互いの授業を履修することが可能でした。実はこれは学び手によほど明確な問題意識がなければ非常に酷です。学生時代、私も常にアイデンティティを問われているような状況に、大変苦しみました。今思えば、他力本願や「寄らば大樹の陰」ではない判断軸で問題点を抽出し、解決策を組み立てる、基本的な思考作法を叩き込まれていたのです。
気づいたのは卒業後10年ほど経ってからでした。
当時からこの重要性を見据えて教鞭をとっておられた先生方に感謝しています。
プロジェクト単位で動く私のキャリア形成は、依頼を下さる方々との協働を通して次の方向性が作られます。その時点、その時点でおおよその社会のフレームワークを把握しながら、とても速い世の中の動きにできるだけ間に合うタイミングで現場目線の現実的な解に貢献する情報提供業、といえばよいでしょうか。やはり基本的な目線は中立的なジャーナリスト職です。但し、「○○になりたい」という職業観はありませんので、役職名はゴールではないのです。しばらくは私自身の個人名で働くスタイルが続きそうです。
(掲載日:2008/01/17)