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2006.12.26

雑食性と危機感が大事。枠にはめずに仕事を楽しむ

SFCスピリッツ

雑食性と危機感が大事。枠にはめずに仕事を楽しむ


「Web of the year 2006」受賞式加藤史子さん
株式会社リクルート ホットペッパー担当チーフディレクター
1998年環境情報学部卒業

SFCを卒業し、仕事の苦楽の中で奮闘すること、そろそろ丸9年。情けないのを覚悟で告白すれば、正直、自分がこんな風に長く仕事をするとは想像していませんでした。…実は、我慢して続けてきたのではなく、面白くてしょうがなかったのです。なので、あっという間、でした。気が付けば30歳…、怖いですね。(笑)

スポーツを観戦するよりプレイする方が大変だけど楽しい。カラオケで聞いているだけより(音痴で恥ずかしくても)歌う方が楽しい。

…と同じようなノリで、仕事をするのは、社会というゲームに参加しているような気になります。だから、資本主義社会の中で、お金を使うだけよりも、人にお金を使わせる側であるほうが、そして、サービスや商品を享受する側にいるだけよりも、それを提供する側だからこそ、味わえる喜びがあります。

私は、今、「ホットペッパー」というメディアの企画・編集を担当しています。社内での職種は「メディアプロデュース職」という呼称です。街で配布されるフリーペーパーはかなりお馴染みになってきましたが、そのパソコン版とケータイ版も立ち上げ、1年半が経ちました。

仕事範囲は幅広く、どうやってビジネスとして成立させていくかという最初の事業企画から始まり、誰をターゲットにし、どんな情報や価値を届けるかという媒体(メディア)の設計、各種調査、システムの開発、記事編集などソフトコンテンツ作り…を行い、ようやく新しい媒体として世の中に送り出します。メディアが無事スタートしてからは、毎月発行・更新していくための運用体制、それから読者・ユーザーに広く認知させるための広告宣伝プロモーションなど、…要するに、何でもやり、ビジネスとしての軌道にのせます。

フリーペーパーも、クーポン情報も、人間の生活に無くてはならないものでは全くありません。元々社会に存在せず、ニーズの無かったものを創りだし、当たり前の”文化”にしつつ数百億の売上を獲得する媒体に育て、維持するための根本には、「日々、価値を磨いていないと淘汰されてしまう、誰にも見向きされなくなってしまう」という危機感があります。

SFCで学んだことは数多くありますが、中でも、

  • ほぼゼロの状態から自分の頭で考え、足で行動し、働きかけ、物事を動かしていくことが真に楽しいという経験
    (道なき道を進むのが楽しいと感じるか、苦痛と感じるかでは進むスピードも見える景色も違う。)
  • 自分の専攻・専門は○○だから、という枠をはめて考えるのではなく、様々な角度からのアプローチ、総合的に考えるという、ある意味での雑食性
    (結局、現実のビジネス世界は、複雑な要素が絡まりあう雑食世界です。)
  • SFCの学問の数々は”これって本当に学問…?”と、既存学問ではないのと引き替えに不安になる、だからこそ、それを学ぶ価値に対して真剣になる危機感

これらを獲得できたことが、決して皮肉ではなく、全ては現在の自分に繋がる糧になっています。

SFCでの学びの日々は、資格や知識の蓄積、歴史や実績といった安心できる材料が少ないかもしれません。しかし、現実のビジネス社会は、混沌として不確定要素の固まりなので、その前哨戦として、SFCは非常に優れたキャンパスではないでしょうか。

→「ホットペッパー.jp」ウェブサイト

(掲載日:2006/12/26)