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2006.11.15

道路の下から見えるもの

SFCスピリッツ

道路の下から見えるもの

藤谷一郎さん
姫路市役所 建設局建設総務部建設総務課 寄附・境界担当
2003年総合政策学部卒業、2005年政策・メディア研究科修士課程修了

私の仕事は土地の境界を決めるというものです。正確には、官民境界と言われるもので、姫路市道とそれに接している土地との接している部分の境界線を決める仕事です。

土地には、地域性や人間関係そして記憶など、その地域の過去から現在までのあらゆる要素が凝縮されています。このような土地を扱うだけに、交渉も一筋縄では行きません。先輩や上司と同じ内容を話しても「若い」というだけで説得力を欠いたり、財産を左右する話や利害を直接的に被る当事者どうしの話となるため、全てが紳士的な議論の場になるとも限りません。現地に赴き、その地域や土地の経緯も調べます。まさに、その地域、その土地に密着した仕事です。あらゆる人間模様、二度と同じことがない場面に日々巡りあって、最も地方公務員らしい地面を這いつくばうような経験を積んでいます。

現場で悩ましい問題は、理論は頭で理解できても感情で納得してもらえないという状態です。こうなると理詰めの法律議論は意味をなしません。目の前の問題が、時代的・社会的にどういう前提によるものなのかを見極めた上で、自分の立場(数多くの理論の中で自分が拠り所とする議論がどういう位置付けにあるか)を自覚し、自分の言葉での説明が必要になります。

SFCでは社会のあらゆる分野を学ぶことができます。専門以外の分野を、またその分野がどういう議論をへて現在に至っているのかを知ることができること、そしてそこからどういう将来が展望できるのかを考えられること。個々の知識は直接的に仕事に生かせないかもしれません。しかし、このような社会を俯瞰できるような知恵・素養を身につけられること、そして多領域で自分の位置を見つけられることは、問題の状況判断をする上でとても大切なことです。また、前提を置いて議論を進めるという研究活動の最も基本的な姿勢は、感情が前面に出てくる問題に対処するときだけでなく、仕事を進めていく上で変わりなく重要なものとして生かされています。

地方自治体とは、日本というOSの上で動くアプリケーションのようにも思えます。一定の枠組みの中でどう知恵を絞るか。SFC生の愛情ある知恵で個々のアプリケーションをより魅力的なものにしていきましょう。

おまけ - 私の考える姫路の可能性 -

地方分権が今後進んだとしても、情報の発信力はますます東京への一極集中を強め、地方の都市への文化的な依存はより進むことになるでしょう。姫路という街は、世界文化遺産の姫路城を筆頭に超一級の地域資源を数多く擁するだけでなく、人口50万人という大きすぎない都市基盤を持ち、潜在的な独自の情報発信力は非常に大きいと考えます。これから強まる地域間競争。小粒でもぴりりと独自の存在感を示せる街へ。姫路という街をお見知りおきください。

姫路市ウェブサイト
http://www.city.himeji.lg.jp/

(掲載日:2006/11/15)