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Magazine
2006.05.17

O2Farmの百笑生活

SFCスピリッツ

O2Farmの百笑生活

大津耕太さん・愛梨さん大津耕太さん
O2Farm、1998年環境情報学部卒業

大津愛梨(旧姓:吉田)さん
O2Farm、1998年環境情報学部卒業

私たちは農業を始めて4年目。アイガモやコイを使った無農薬のお米を産直し、阿蘇特産のあか牛や減農薬のきゅうりなどを育てています。また、冬場の農閑期には、農業や環境に関する報告書を書いたり、視察のアレンジをしたり、翻訳や通訳などもしています。SFCのインテンシブコースでドイツ語を履修していた耕太。ドイツ生まれの愛梨。卒業1年後に結婚した私たちは、二人そろってドイツの大学院に進学しました。ランドスケーププランニングの勉強をして帰国したところ、東京の「土を踏まない暮らし」に大きな違和感を覚えました。日本の食料自給率は世界最低水準。自給率の高い欧州に比べると、日本人の暮らしはとても頼りなく見えました。

私たちは、農業が自然環境や農村景観を守っていることを学びました。例えば田んぼに水を張るだけでも、地下水の涵養や土砂崩れの防止、カエルやトンボを始めとした生態系の維持が、同時に行われます。確かに農業だけで生計を立てるのは大変かもしれません。しかし一方で「食うもの」に困ることはなく、昼からビールが飲め、残業や上下関係のない生活。実家が先祖代々続く農家なので、土地や機械に投資をせずに農業を始められたことが、私たちにとって幸運でした。パソコンや語学を使って「+α」の仕事ができるSFC生だからこそ、田舎で農を基盤にした生活をして欲しい。幅が広く奥の深い農業にこそ、「環境情報」や「総合政策」が活きるのだと思います。

→O2Farm(オーツーファーム)

(掲載日:2006/05/17)


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農業こそ「環境情報+総合政策」の究極の姿 多くの人が当たり前に農業を選べる世の中に

大津 耕太
O2Farm(オーツーファーム)代表
1998年環境情報学部卒業

大津 愛梨
NPO法人田舎のヒロインズ理事長
全国ご当地エネルギー協会幹事
里山エナジー代表取締役
1998年環境情報学部卒業

慶應SFC時代に出会った夫と、彼の郷里である阿蘇で環境保全型の農業を営む傍ら、再生可能エネルギーの利用拡大に挑戦したり、これからの農業や農村の魅力を発信しています。就農してあらためて感じるのは、農業こそ「環境情報+総合政策」の究極の姿だということ。その年の環境の変化を把握し、その変化に合わせた対策を練って実行する。幅広く、奥深い農業にこそ、SFCでの学びが活きるのだと思います。また、学生時代に都心から離れたキャンパスでも、世界につながる研究や仕事ができると体感できたことは、私たちの人生観・世界観につながっています。 農業で生計を立てることは容易ではないかもしれませんが、「何が起こってもまたゼロからでも始められる」という自信は、子どもたちの「生きる力」にもつながります。私たちのような生活が、世の中の人たちにとって特別ではない「人生の選択肢」になればいいなと思います。(大津愛梨)

卒業後のキャリア
1998年  それぞれにシンクタンクや研究機関で研究
1999年  結婚後、熊本県南阿蘇にて就農
2002年  共にミュンヘン工科大学に留学し修士号取得
      農業の拡大に伴い、主に耕太さんが農業を、愛梨さんが講演等を担当。
     「九州バイオマスフォーラム」「里山エナジー」を設立。

(ウェブページ「卒業後のキャリア」掲載)