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2006.03.29

棋士のミッション

SFCスピリッツ

棋士のミッション

梅沢由香里さん
プロ棋士
1996年環境情報学部卒業

大学4年の時にプロ試験に合格し、現在棋士として11年目になります。棋士の仕事は対局の他、一般ファンの方と対局して指導や講義を行ったり、時には地方へ出張し、イベントに出演したり子供や老人まで幅広く指導することもあります。

他のプロ、たとえば野球やサッカーの選手は、現役時代は自分の技を高めることに集中し、引退してから子供たちを指導するというのが通例ですが、基本的に体力に左右されにくい囲碁の世界は自分で引退を決めるまで現役を続けることが出来ます。そのためほとんどの棋士が、自分の芸を磨くことと普及活動を同時に行っています。私もいずれも棋士の大事なミッションだと思っているので、どちらも大切にしたいと考えています。

お蔭様で、漫画『ヒカルの碁』の影響により、囲碁は子供たちにも広く伝わりました。漫画が始まる前と後では囲碁人口も圧倒的に増え、レベルも上がりました。最近の子供はとても強いです。

つい最近、『脳を鍛える大人のドリル』などで有名な川島隆太教授の研究により、子供が囲碁を打つと「コミュニケーション力」や「我慢」「創造性」などを司る前頭前野が活性化されるという結果がNHKニュースで取り上げられました。デジタルなゲームも人気ですが、未来も目的も自分で創っていく囲碁が「子供の教育」という観点からも注目される日は近いかもしれません。

私はこの本当に面白い文化を、子供だけでなく、これからは最も囲碁人口が少ない同世代(20代から30代)にも広めていきたいと思っています。具体的には頭脳スポーツの国際大会の開催や、囲碁のルールを簡単に覚えられるような入門教室の開催や研究に務めています。おっと、もちろん棋士として日本一を目指すこと、これも夢見ていますよ!

(掲載日:2006/03/29)


 吉原 由香里
1996年 環境情報学部卒業
棋士

棋歴
1996年 入段
2002年 第4期女流最強戦準優勝
2003年 第24期女流鶴聖戦準優勝
2007年 第10期女流棋聖戦 万波佳奈女流棋聖を2-1で破り初のタイトル奪取
2008年 第11期女流棋聖戦 向井千瑛二段を2-0で破りタイトル防衛
2009年 第12期女流棋聖戦 加藤啓子女流最強位を2-1で破りタイトル防衛
2010年 第29期女流本因坊戦挑戦者決定戦進出
2011年 第14期女流棋聖戦挑戦者

その他
1996年 4月から2年間NHK杯の司会を担当
1998年 4月からNHK教育「梅沢由香里のレッツ碁」講師
2004年 NHK趣味悠々「1から始める梅沢由香里の碁」に出演
2001年 ジャーナリストクラブ賞 「ヒカルの碁」監修により
2004年 第22回テレビ囲碁番組制作者会賞
2005年 5月 国際囲碁連盟理事就任
2007年 4月 東邦大学理学部客員教授に就任
2008年 ジャーナリストクラブ賞 「IGO AMIGO」 の活動、女流棋聖獲得により
2008年 12月 東京大学特任准教授

※ご所属・肩書・記事内容は掲載当時のもの

(ウェブページ「卒業後のキャリア」掲載)