SFCの現場
岩竹徹研究室
研究領域キーワード
コンピュータミュージック、デジタル音響処理、音響心理学、サウンド/インタラクションデザイン、音楽表現インターフェイス、リアルタイム演奏/作曲システム、サウンドアート
どのような研究をしているのですか?
土居(院生):サイバーサウンド・プロジェクトでは、誰も聴いたことが無いような音を生み出すことを目指して、さまざまな音響の合成手法を学びつつ、日夜奮闘しています。
僕個人としては、以前は自然現象から音を取り出し、加工して聴かせるという研究をしていました。最近では、コンピュータという枠組みを超えて、物理現象のみから、新しい音を取り出す研究を行っています。風の強い日に「ヒューヒュー」という音が鳴る、「もがり笛」という現象を利用して、新しい音色を作り出そうというのが、現在の研究の主眼です。
林・小山(学部生):CSPは、本来は院生向けのプロジェクトなのですが、学部生も大勢参加しています。普段は、みんなそれぞれがテーマを持って、作品やシステムを制作しています。週に一回のミーティングで、先生や博士や修士課程の先輩などから、アドバイスをいただいたり、意見交換などをしています。昨年度は、岩竹研の学部生有志で、iPhone用の音楽アプリケーションの開発プロジェクトをしました。企画から実際のプログラミングまで、一貫して自分達の手で、研究開発を行なうものでした。これは、モアレ(干渉縞)という現象をモチーフに、ビジュアルとサウンドが一体となった演奏体験ができる、といったものです。身体的な動作を使って、映像や音を感じながら、演奏をしていくことができます。昨年度のORFで、展示を行なった他、全国のこの分野の学生が集う、インターカレッジコンサートで、これを使った作品を初演しました。テーマは、「干渉縞」という、普段は忌避される現象を使ったので、「気持ち悪い」といった反応を返す人や、逆に興味を抱く人など、反応が人それぞれなようで、面白かったです。
研究室の一日を教えてください。
土居:研究活動は、週に一回行われるミーティングが中心となります。このミーティングでは、各自が持ち寄った論文や話題に関してディスカッションを行ないます。自分の問題意識や、作っている作品に対して、時には音楽という枠組みを超えて、みんなで語り合います。それ以外の時間は、暇なときに研究室で本を読んだり、楽器を演奏したり、音楽について語り合ったり・・・と言った感じです。一緒に旅行に行ったり、和気藹々と過ごしています。
林・小山:本当に自由です。アトリエのようで、朝から晩まで、自由に出入りできて、作業したり、食事や談笑したり、お茶を飲みながら情報交換など、和気あいあいでやってます。
その分、個人ベースで自分のプロジェクトを進める必要があるので、しっかり目的意識を持って、活動をしていかないと、後で大変になるので、積極的に自分で動いていく事が必要です。
たまに、授業後に創作のアイディアになりそうな、経験をしに行ったり、研究室のみんなで旅行を企画して、レクリエーションしにいったりと、課外活動も、結構頻繁にあるので、体力が求められます。
先生はどんな方ですか?
土居:岩竹先生は、いかにも音楽家然とした方で、そこにいるだけでも音楽が流れてきそうな感じがします。常日頃から、学生のクリエイティビティを重んじてくださり、好きな研究をやらせていただいています。しかし、ときには厳しくも愛のある助言を与えてくださいます。人生に関しても、大事な助言をくださったり、研究という枠組みを超えて、研究室の父親のような存在です。
林・小山:笑顔が素敵で、発想がとても日本人離れしていて、僕ら学部生に対しても、とても寛大に自由な活動を認めていただけます。視野がとても広く、クラシック音楽の楽典的な見地から、先端的なメディア表現やパラダイムまで、広い範囲からアドバイスいただいています。一方で、課題の内容やアイディアの独自性などに、とても厳しい面を持っていらっしゃいます。なので、僕らも、自分達の研究に関しては、ベストエフォートで望んでいます。
研究室ならではのキーワードはありますか?
土居:強いてあげるとすれば「変態性」でしょうか。芸術に関わっている人は皆、ちょっと普通の人とは違う何かを持っています。もちろん音楽も例外ではありません。SFCの中、更にはXDの研究室の中でも、特に芸術に近い研究室だからこそ、個性が強い、いい意味で「変態」的なメンバーが揃っています。変わり者の多い環境でしか生まれないような、不思議でおかしな化学反応がとても心地よい研究室です。
林・小山:後は、「沈黙は無価値」です。ミーティングなどで、積極的に自分の意見を持って、発言しないと、その場にいないのと同じ、という意味です。日本だと、沈黙していると、考えている、と捉えてくれますが、欧米では「自分の意見がない」という意味になってしまいます。ハーバード出身の先生らしい口癖だと思います。実際、我々も、ミーティングでは、そうあることを求められるので、積極的に発言するように心がけています。
リポーター
政策・メディア研究科修士課程1年 土居真也さん
環境情報学部4年 林有紗さん
環境情報学部2年 小山慶祐さん
(掲載日:2010/07/26)
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