渡邊 潤さん
ガボン共和国のクラムトゥHIV外来診療センター勤務
2009年 看護医療学部卒業
--現在、どんな仕事をされているのですか?
国際協力機構青年海外協力隊の派遣により中央アフリカのガボン共和国のクラムトゥHIV外来診療センターで働いています。ガボン共和国のHIV感染率は4.1%(2012年)で減少傾向にありますが、依然として深刻な問題をもたらしている感染症の一つです。センターは人口6万人の州を管轄しており、治療、薬の処方、検査、カウンセリング、患者会、予防啓発、ピアエデュケーターの育成などを行っています。私はセンターの業務補助、機能強化を要請されており、主に患者さんのHIVや生活習慣の理解を向上させるための教材の作成や患者会の支援、センターの統計業務や問題点の分析、州内の学校や村に対する予防啓発・検査のコーディネートをしています。またガボン保健省とも協力し、全国に配布するHIVの治療に関するパンフレットの作成など国レベルの政策にも取り組んでいます。
--看護医療学部を選ばれたきっかけは?
高校生の時に特に将来の夢ややりたいことがなかったのですが、医療や福祉に携わる仕事がしたいと漠然と考えていました。オープンキャンパスに参加した際に患者さんと近い立場で人生のお手伝いができる看護師、保健師という仕事を知り入学しました。またグローバルに活躍されている医療者にも興味があり、「青田与志子記念基金」など海外での学びを積極的に支援してくれるのも学部の魅力の一つでした。
--どのような学生生活を送っていましたか?
「国際協力研究会PEACE」でのサークル活動に没頭する日々でした。1年生の時に中国のハンセン病回復村で村人と現地の学生とワークキャンプを行い、家の修繕や道路の舗装などのインフラ整備をし、現地の人々と問題を共有し、それに向かって共に汗を流す喜びを初めて感じることができました。2年生ではタイのHIVホスピス、孤児院での活動を始め、患者さんの日常生活の支援や、エイズ孤児にレクリエーションをする活動を行ってきました。その際にエイズという世界規模の問題を肌で感じ、エイズで苦しむ人々の役に立ちたいと思いました。その時の経験が今の国際看護、国際保健の現場に携わろうと決めたきっかけでした。その当時のメンバーや現地の人々と語り合い、過ごした時間はかけがえのない時間でした。
--現在の仕事とつながっている、学部時代の学びについて教えてください。
卒業研究では倫理学を専攻し、ハンセン病の偏見、差別の歴史について取り組みました。そこで得た病気の歴史的背景や政治、経済、法律、文化、宗教など病気を取り巻く様々な要因を包括的に分析する力が付いたと感じています。現在、活動しているガボンでのエイズ対策の歴史、ガボン政府のエイズに対する戦略、人々のエイズに関する考え方など様々な要因を分析し、最善の対策を講じなければならない今の仕事に、学部で学んだことが生きていると感じます。
--看護医療学部を志す後輩たちへメッセージをお願いします。
入学する際に10年後にアフリカで働いているなんて全く想像していませんでした。そのきっかけを与え、今の仕事の礎を築かせてくれたのが看護医療学部であり、出会った先生方、一緒に学んだ仲間たちでした。今振り返ると人生を左右する重要な4年間を過ごしたと改めて感じます。日本や世界で、看護職は患者さんのケアにあたることも重要ですが、多方面で活躍がますます期待されています。その期待に応えるため、学部でたくさんのことを学び、将来多くの人を救えるように、充実した4年間を過ごしてください。