総合政策学部 准教授 神保謙
専門分野:
国際安全保障論
アジア太平洋の安全保障
東アジア地域主義
日本の安全保障政策
"戦争と平和"に関わる
伝統的かつ新しい研究領域
本研究会では、国際安全保障をメインテーマに研究を行っています。国際安全保障が扱う領域は多岐に渡ります。国際政治学・軍事学・地域研究にまたがる横断的分野ですが、ひとことで言えば "戦争と平和" を扱う研究領域です。
伝統的には、国際安全保障は国家関係の問題です。たとえば、現在のアジアであれば、中国の急速な台頭や北朝鮮の威嚇的な行動に対し、どのような理論と政策によって安定的な秩序が保つことができるか、という課題を検討します。
他方で今日の世界では、国際テロリズム、海洋安全保障、紛争後の平和構築をめぐる諸問題など、国際安全保障の領域が国と国との関係を超えて大変複雑化しており、これを読み解く包括的・多面的な分析枠組みが求められます。
さらに、サイバー、宇宙領域、先端技術革新などの新しいドメインが、安全保障の概念にどのような影響を与えるのかという観点も、国際安全保障の今日的な研究領域になっています。
実践的な研究会を目指して:
クライシス・シミュレーションの導入
研究の進め方は、大きく3つの柱があります。まず1つは、グループワークです。現在、本研究会には、多種多様な関心を持った30名ほどの学生が所属しています。学生の研究関心の共通性を捉えてグループをつくり、共同研究の成果を発表してもらいます。
2つ目の柱は、クライシス・シミュレーションです。たとえばイランの核開発問題や南シナ海での武力衝突など、具体的な危機を想定し、学生が日本政府、外国政府の代表になり、各国がどのように政策を立て、対応するかをロールプレイします。昨年は海上自衛隊幹部学校の協力を得て、研究会の学生が実際の自衛官と一緒に図上演習をする機会を持つこともできました。
3つ目の柱は、学期末に作成するタームペーパー(論文)です。一学期の成果をタームペーパーにまとめることにより、研究成果を着実に身につけていけることを目指します。
世界が抱える問題に共感しながら 国際関係を見ていけるか?
これから国際安全保障を学ぶにあたり大切なのは英語力です。研究会の学生には英語に習熟することを特に強調しています。世界には英語のリソース(資源)による著作・論文・その他情報があふれています。安全保障の現場により近い場所で英語で情報を得ることの重要性とともに、欧米やアジアの学界やシンクタンクの論調を理解し、批判的読解をするためにも、英語力は極めて重要です。
また全体と個別の関係性を把握する能力も重要です。理論的なフレームワークで世の中を俯瞰する能力と、現場で本当にがんばっている人たちに思いを寄せる能力。この2つをつなげることが重要なのです。
国際安全保障=戦争と平和に関する問題という研究領域は、医療と同様、人の生と死を扱う学問領域です。だからこそ最も大切なのは、人の命に対する敏感さです。今日、中東で何が起きているのか? 北朝鮮で人々はどのような暮らしをしているのか? こうした問題に想像力を持って共感をしながら、国際関係を見ていけるかどうかということが、この学問領域を志す人に求められる、大切な資質だと言えるでしょう。