荒牧悠さん
作家
作家
2012年 環境情報学部卒業
2014年 政策・メディア研究科修士課程修了
私はSFC25周年を盛り上げるイラスト、ORF2015のメインイラストを描かせていただいた。
普段は、金属を溶接したり、木を削ったり、絵を描いたり、時にはモーターを動かしたりしながら暮らしている。
制作活動の根底にあるのは、人間の認知の不思議さで、作品を作ることでその不思議さを咀嚼をしようと試みている。
SFCを受験したのは、デザインという言葉がいたるところに散見され、キラキラと輝いていたからだった。
当時、勉強する前のデザインは私の中で「かっこいい」という憧れの気持ちと強く結びついていた。
世のデザイナーたちはなんてことを思いつくんだ、なんてこった、スマートすぎる。と。
自分はそんなこと思いつくこともできないし、センスとかないし、絵も上手に描けないし、、、。
デザインに関する仕事につけたらいいなくらいに思っていた。
しかし、学部2年生の秋に受講した山中俊治先生のデザイン言語(造形プロダクト)での、「河原の小石を木で作る」という課題によって私は大きく進路をそらした。(というよりどこへつながるかわからないトンネルを掘り始めたというか、、)
ゴツゴツした石が川の流れに身を任せて、角をぶつけながら丸まっていく様を想像しながら木っ端を小刀で削り、仕上げに紙やすりを使い、河原の小石のあの手触りの良さを出す。大きさ、角のとりかた、仕上げ、どれを取っても河原の小石らしさを木に宿らせる大事な要素で、意図が成功しているかしていないか、案外わかりやすい評価がくだされる。
初めて作った小石たちは納得のいく出来ではなく、仕方なしに提出した。
しかし、何かの会話がきっかけで、先生から「また作ったら持ってきていいよ」と言われ、とても驚き嬉しくて「課題がおわったら一旦終わり」という気持ちは吹き飛び、さらに「自分でもチャレンジできるんだ」と目の前が一気に広がったことを覚えている。
それから、夢中になって小石を何個も作った。
たった再提出が認められたというだけかもしれない。
だけれど、学ぶ前から勝手に生成された「かくあるべき姿」が、自分にはできないという思い込みを膨らませていたのだと実感した。
他の先生方や周りの仲間たちも、柔軟な考えを持ち、アイデアにあふれ、いつも思考を刺激する人たちばかりだった。そのような人たちに囲まれ、私の思い込みは一つ一つ溶けていった。