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2018.05.23

SFCの最先端研究から医学の研究者へ | 岩崎由香さん(2006年環境卒、2008年政メ修了、2011年博士修了)

岩崎由香

慶應義塾大学医学部分子生物学教室専任講師

環境情報学部2006年卒業、政策・メディア研究科修士2008年修了、同博士2011年修了

コンピュータを用いて生命現象をひもとくバイオインフォマティクス解析を軸に、分子生物学実験を取り入れた小分子RNAの研究を続けています。

高校時代から研究に憧れていましたが、具体的な対象があった訳ではありません。大学受験を前にして、各校のパンフレットを見ていて冨田勝教授の記事が目に留まり、コンピュータと生物を組み合わせた新しいサイエンスを推進していきたいというメッセージに共感してSFCを志望しました。

学部1年の秋から、先端生命科学研究会に所属しました。初めは湘南藤沢キャンパスで学んでいましたが、2年の秋から通年で鶴岡タウンキャンパス(TTCK)を拠点とするバイオキャンプに参加しました。最先端の研究といっても、思ったよりも地味で、失敗することのほうが多かったのを憶えています。研究は仮説と検証の繰り返し。嬉しいのは、自分で立てた仮説が実験や研究の結果で証明されたり、間違っていても意外な可能性に気づいたりすること。そんな小さな発見が研究の面白さです。

もちろん最初は出来ないことやわからないことだらけでした。TTCKでの授業や実習は、学んだことが直接的に研究に役立つ実践的な内容が主体。研究をしながら必要な知識を授業や自主的な学習で学ぶスタイルで、意欲的に取り組むことができました。

先端生命科学研究会に所属し、このようなスタイルで研究活動を始めることができたのは幸いでした。現在でも、例えば新しいテクニックを導入したり、研究の発展の可能性を考えたりする時にも、良い意味で考え過ぎることなくチャレンジを積み重ねることができていると思います。

「究極の遊び」としてのサイエンスを満喫

先端生命科学研の実習は、「基本的に自分で考えて進めてください」というスタイル。設定された目標に最適な方法を論文などで調べながら、自分で考えたやり方で進めます。このような授業は教員には負担が大きいのですが、学生にとっては大きな経験となります。バイオキャンプの実習は規定時間内に終わらないことも多く、先生は夜でも土日でも指導してくださいました。学生の「やりたい」という思いを後押ししてくれる先生方の柔軟性があればこそ、研究の面白さに気づけたとも思っています。

鶴岡は海、山、温泉があり、魚やお米が美味しい場所。バイオキャンプは学生が十数人なので、交友関係も親密で寂しさはありませんでした。いまだに当時のメンバーとは定期的な近況報告会をして、交流が続いています。卒業生には生物学研究を続けている人もいれば、IT関連企業やコンサルティング会社に勤めている人もいます。

コンピュータに詳しくなかった私ですが、SFCでプログラミングを学んだことは役に立っています。研究者同士だけで情報をシェアするのではなく、わかりやすく情報を発信できる力もつきました。またSFCは語学も充実しており、能力や目的によってさまざまな英語の授業が選択できます。留学のためのスコアが欲しい場合も、英語でディスカッションできるようになりたい場合も、それぞれに特化した学びで研究活動に必要な英語力が身につけられます。こういった充実した授業もSFCの魅力だと思います。

研究者は引き篭もっているイメージがあるかもしれませんが、最近の研究者はそんなこともなく、さまざまな人とのインタラクションが求められます。質の高いディスカッションをできることが、より良い研究を進められるポイントのひとつ。先端生命科学研究会でも、先生や先輩方とインタラクションしていくなかで、自分が思ってもみなかった視点を得られました。またSFCでは、自分が研究したい内容を説明して周囲の協力を得ながら進めていくため、プロセスに主体性が求められます。このように、研究者に限らず研究者以外の仕事でも重要なチームワークも鍛えられます。

冨田教授の口癖は、「サイエンスは究極の遊び」。私も学部時代に学会や国際論文誌で研究発表の機会に恵まれ、小さな発見の積み重ねやたくさんの方々とのコラボレーションから問題発見と解決の面白さを学びました。楽しくサイエンスができるという点は先端生命科学研究会の大きな魅力だと感じています。

教授や研究者には魅力的な方が多く、自身のキャリアパスを考える上でとても良いロールモデルになります。将来の夢は、自身が興味深いと感じる対象を自由に研究することにより、豊かな知見を生み出すような基盤的な発見をすること。たくさんの人たちとのコラボレーションを通して新しいことを発見できるよう、魅力的な研究者を目指したいと考えています。