秋吉 浩気さん
建築家/ メタアーキテクト / VUILD株式会社代表取締役CEO
2015年 政策・メディア研究科修士修了
職業は建築家。それが小学生の頃から掲げていた唯一の夢だった。2015年に大学院を卒業し、右も左も解らぬまま建築家として独立して早5年。独立当初は、30歳までに作品を造り建築雑誌の表紙を飾るという、浮ついた目標を掲げていた。
気づけば、旧来の建築家像である作家主義を否定し「メタアーキテクト」という職業を名乗っている。また、「建築の民主化」を掲げ数億円の資金調達実施し、スタートアップを経営しているのだから人生は解らない。20代の頃に構想した人生計画から大きく脱線したものの、結果として初めての建築作品が建築雑誌の表紙を飾り、その作品が『Under 35 Architects exhibition2019』にて最優秀賞のGold Medal賞を頂戴することになった。
SFCには修士の2年間お世話になったが、誰もやったことのない、比較されることのない職業を創りたくて、エクスデザインプログラムに応募した。学費は全額自己負担。日本学生支援機構の奨学金を満額借りて入学した。アルバイトをする必要がないよう、生活費も奨学金で賄った。2年間で本気で人生を変えたかったから、このように退路を断つ事にした。この自己投資の結果、研究成果による学費返済免除と在学時の起業によって、2年間の学費分は回収することができた。同期が学費を理由に国立大学に進学する傍ら、「何を何処で誰に学びたいか」という本質的なところで進路を選んで正解だったと思う。
修士1年の前半は、学部1年生に混ざりプログラミングの授業を受講するなど、SFCの学部生が4年かけて習得するスキルを半年で獲得できるよう必死で勉強した。所属していた田中浩也研究室では、共同研究の研究リーダーを任せていただき、予算配分や打ち合わせでの意思決定など、全ての権限を移譲して頂いていた。研究会では、先生も学生もフラットな関係で共に学び発言することができる。いま思えば、これこそスタートアップ経営の極意であり、それを無意識のうちに叩きこまれていたのだろう。この場を借りて、師である田中浩也先生に感謝申し上げたい。
師からは同時に、「慶應義塾とは塾である」と教わった。同じ志を持つ仲間が、上も下もなく共に切磋琢磨し、未踏領域を開拓していく。そんなSFCスピリッツを曲がりなりにも継承し、日々研鑽に励んでいる。
秋吉 浩気(あきよし こうき)
1988年大阪府生まれ。2017年にVUILD株式会社を創業し、「建築の民主化」を目指す。主な受賞歴にSDレビュー2018入選 、SDレビュー2019入選、Under 35 Architects exhibition 2019 Gold Medal賞。