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2020.05.25

あるべき未来へ、超融合のクリエイティブ|野田 臣吾さん(1998年総合卒業)

野田 臣吾さん

Any合同会社 Founding Partner

1998年総合政策学部 卒業

異なる分野から同じ景色を見る_SJU0920.jpgのサムネイル画像

多くのものを手に入れたこの先で、人は何を求めていくのでしょう。どのようなものに心を魅了されるのでしょう。私は、さまざまな視点から検討され、さまざまな意味を持つ、強度の高いプロダクトやサービスではないかと考えています。しかし、それを自分の専門領域だけで生み出すのは難しいことです。そこで、異なる分野出身のパートナーたちと「Any」を立ち上げました。
「Any」は、ブランドプロデューサーや建築家、デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持つ専門家が融合したクリエイティブ集団です。各自が未来へ向けて、それぞれの領域で、私と共通の思いを抱いていました。異なる分野から、みんなが同じような景色を見ていたのだと思います。

OSを開発したり共同保育を支援したり

私は、経営戦略や事業投資といった領域を中心にクリエイティブに関わっています。実際のプロジェクトには、社内での開発からコンサルティングなど外部とのコラボレーションまで、幅広いバリエーションがあります。
たとえば、ニューヨークにあるデザインスクールの学生たちの依頼で、新しいOSの開発に取り組んでいるケース。これからを見据えた新しいホテルのあり方を、ビジネスモデルを含めてコンサルティングしているケース。働くお母さんたちが探っている、子どもの共同保育という新しい仕組みを支援しているケースなどがあります。また、新しい分野を切り開こうとする芸術や文化、先端技術が集結する「AnyTokyo」というクリエイティブ・フェスティバルも運営しています。

起業家として、また投資家として感じていること

私のキャリアは、日本の産業を興していくような仕事に携わりたいという思いから、金融業界に就職したことに始まります。最初は日本の銀行、その後外資系投資銀行に転職し、さらに、まったく業種の異なる数社のスタートアップ企業を経験しました。そのような歩みの中で培った知見をもとに自分の会社を設立し、スタートアップを投資により支援する活動を「Any」と並行して行っています。
投資のポイントはいろいろありますが、最後はやはり人。経営者の思いや、事業をやり遂げる熱意が大事になってくると思っています。しかし、スタートアップは熱意だけで成功するような簡単なものではありません。では、うまくいっていないとしたら、その理由はどこにあるのか。もしかすると、これからの時代に求められるプロダクトやサービスを生み出せていないという部分にあるのではないか。そう感じていることが、「Any」の活動に活かされています。

自律・分散・協調のインターネットビジネス

金融業界からスタートアップへの転職には、SFCでの学びと人脈が関わっています。きっかけは、「楽天市場」の立ち上げにも従事したSFCの後輩と出会ったことです。彼が新たに立ち上げていた、「フォートラベル」という旅行のユーザー参加型メディアの考え方を聞いて、インターネットの最先端を走っていたSFCの環境を思い出しました。
"情報が分散された先で、多くの人によるさまざまなコミュニケーションが起こる。それぞれの自律により、コミュニケーションはよりよい方向へと協調していく"。彼のビジョンは、村井純先生(環境情報学部教授)から学んで非常にワクワクした「自律・分散・協調」というインターネット思想を形にするビジネスでした。そこで、私もこの世界に飛び込んでみようと決意し、「フォートラベル」に参画して共同代表として運営に携わりました。

「Any」に通じるSFCの学び

"今まで別々に存在していた学問を横断的に学ぶことで、ものごとを統合的に捉える"。私が共鳴したSFCの思想は、「Any」の活動にも通じています。既存の専門領域の垣根を越えて、問題を解決するための方法を探る。先端的なデザインやサイエンスを融合させて、多様な分野の異能とコラボレーションする。これからの時代に求められるプロダクトやサービスを生み出すために、SFCで学んだ成果のすべてをつぎ込みたいと思っています。
一つの専門性を身につけるだけにとどまらず、多様な領域の学びに取り組み、多様な領域の人々とコミュニケートする。それは私が在学中に意識していたことでもありますが、とても楽しいことです。これからSFCで学ぶみなさんにも、そのような方向を目指してほしいと思います。

いろいろなルートから頂上を目指す

もう一つ感じているのは、自分なりの未来を描かないと、何を学んだらいいか、判断するのが難しい時代になっているのではないかということです。未来は受動的に訪れるものではなくて、能動的に関わって創っていくものです。まずはポジティブな未来のイメージを持つことが重要だと思います。
私は今後、さまざまなシナリオが想定される中で、自分たちにとって望ましい未来を定義していきたいと考えています。「Any」の活動も、"こうあるべきだよね"という思いでつながっています。たとえば、OSの開発と共同保育の支援は、プロダクトやサービスの視点からすると天と地ほど離れたプロジェクトに感じられるかもしれません。しかし、その到達点は近いところにあるのです。登山に例えると、いろいろなルートから頂上を目指し、最後にまた出会おうというイメージで超融合のクリエイティブに取り組んでいます。
初代総合政策学部長の加藤寛先生は、「君たちは未来からの留学生だ」と仰いました。その言葉は、社会に出て経験を積めば積むほど実感し、かみしめることができます。それはきっと、私の歩みの中で変わることのない、"未来をどう創っていくか"というテーマが集約されているからだと思います。

野田様サブカット.JPG「Any」に集まる様々な分野の異能たち