看護医療学部では、2024年度に日本看護学教育評価機構による分野別評価を受審している。2024年3月末に自己点検・評価報告書などの草案を提出し、機構からのフィードバックを受けて、ちょうどこの原稿を執筆している2024年5月には本提出が行われることになっている。2024年10月には、看護医療学部校舎への評価委員の訪問を受け、学生や若手教員へのインタビューや授業見学を含む実地調査が行われる予定である。当方は学部の点検・評価委員会の委員長として、関係の皆様の多大なご協力をいただきながら、このプロセスに携わっている。
現在、学校教育法に基づいて、国公私全ての大学、短期大学、高等専門学校に対して、定期的に文部科学大臣の認証を受けた評価機関による第三者評価(機関別認証評価)を受けることが義務付けられている。文部科学省のホームページによれば、この認証評価制度は、大学等の教育研究の質の担保を図るため、大学等の組織運営や教育研究活動等の状況を定期的に確認する体制を整備する観点から導入されたものである。慶應義塾大学は認証評価機関の一つである大学基準協会による評価を2019年に受審している。大学基準協会のホームページによると、この評価は「理念・目的」「内部質保証」「教育研究組織」「教育課程・学習成果」「学生の受け入れ」「教員・教員組織」「学生支援」「教育研究等環境」「社会連携・社会貢献」「大学運営・財務」の10の基準により行われている。
一方、看護医療学部が現在受審している「分野別評価」は、大学等をまるごと評価する、いわゆる「機関別評価」では必ずしも審査されない、看護学教育に特化した評価基準について、看護学の教育課程とその展開にあたって必要な点に絞って評価するものとなっている。日本看護学教育評価機構のホームページによれば、その評価基準として「教育理念・教育目標に基づく看護学教育課程の枠組み」「看護学教育課程における教育・学習活動」「看護学教育課程の評価と改革」「看護学教育課程への入学者選抜」の4つが設定されている。たとえば、教育理念・教育目標については、所属する大学の設置趣旨や建学精神と、学部の理念や目標が合致しているかどうかが問われるとともに、教育課程が看護学の基礎を効果的に教授する科目構成となっているか、といった評価内容も含まれている。すなわち大学全体としての目指す姿と、看護学の基礎教育機関としての役割とを、どのように統合し、実現しているかが問われる内容になっている。
今回、自己点検・評価報告書を作成するなかで、改めて看護医療学部の特徴や強みを確認することができた。看護医療学部においては「基盤となる人間力」「看護・医療の専門的力」「連携・協働する力」「国際的に活動する力」「変化を起こす力」の5つをディプロマポリシーとして掲げており、これは「先導者たらん」とする慶應義塾の理念を踏まえながら、看護学の基礎を教授しようとする本学部の方針を表したものになっている。カリキュラム上では、先端医療等の最新の知見を教授する科目、海外との交流を行う科目、多職種の連携に関する学びを促進する「医療系三学部合同教育」等に加え、総合政策学部・環境情報学部の科目をはじめとする他学部科目も履修可能であることが本学部の強みのひとつになっている。一方で、看護学基礎教育として求められる教授内容が多様化・高度化する中で、いかにして学生の多様な学びの機会を保証するかは、課題の一つといえる。
評価項目に照らして現行のシステムを点検する中で、課題が明確化したことを受け、すでに改善されたものもある。例えば、看護学教育評価ならではの視点として、臨地実習における教員の指導能力の向上や、実習施設との密接な連携が求められている。それを受け、実習施設との連携をさらに組織的・継続的に強化することを目指し、附属病院以外の実習機関を含めた実習指導に関連するFDや、附属病院との人事交流の仕組み(Keio Academic - Practice Partnership in Nursing (KAPPN))などが開始されている。
評価のプロセスは作業量が多く、正直負担に感じることもあるが、改めて学部の強みを確認するとともに、課題を解決するためのヒントを得ることができる、貴重な機会であると実感している。年度末に評価報告書を受け取り、一段落したら、またお礼とともに皆様に報告させていただく機会があればと思っている。