ぐっと気温が下がり、キャンパスの秋色は深まった。万学博覧会が開催される時期と重なった。
11月23日(土)と11月24日(日)に、湘南藤沢キャンパスは万学博覧会を開催する。SFCに関心を持っている皆さんは、是非、SFCに足を運んでほしい。
要するに、万学博覧会はSFCが謳う「学際的」で「領域横断的」な教育研究のまるごとをつかまえる絶好の機会だと思う。総合政策学部、環境情報学部、看護医療学部、政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科に所属する教員は、日々、個々の専門性のなかでの先端的な学問を追究しつつ、同時に、それを総合的に捉え直して関連する領域で活躍するために、SFC内外の教員と協働している。その一旦が万学博覧会で披露されている。
万学博覧会は、いくつかの大きなイベントの束である。これまで、キャンパスにおいて毎年、各々時期に実施していた6つのイベントが、毎年11月の第3週の週末にギュッと集まった。
まずは、SFC オープン リサーチ フォーラム (ORF)だ。SFCは、研究活動をつうじて社会と協働し、その知見の共有を重要な社会的責任の一端であると考え、活動の現状と将来の計画を広く社会に発信することを目的として、このORFを1996年以来 実施してきた。そして、全国の高校生の皆さんを対象にしたSFCの魅力を体験してもらうイベントとしての オープンキャンパス がある。毎年おこなっている学部長による学部説明会とともに、今年は、特別企画「私たちが考える『SFCで学ぶ』ということ」を実施する。 藤沢市とSFCとの共催による生涯学習講座である 藤沢市民講座 が今年も実施される。もちろん藤沢市民でなくても参加できる。また、慶應SFC学会が、学会員による研究発表・学術交流の機会である 学術交流大会 を開催する。これは学会員による研究分野を超えたSFCを象徴する学際交歓・情報発信の場の形成を目指したイベントと位置付けている。2002年から連続して実施 されてきた。キャンパスの特色を活かした「ものづくり」を支援するユニークな大学図書館を紹介するイベントとして ようこそ大学図書館へ がある。万学博覧会期間中、自由にメディアセンターを見学できるだけでなく、3Dプリンタ体験コーナー を設け、 謎解きイベント「カモからの挑戦状」 がある。これらの企画イベントと卒業生・教職員を対象として ホームカミングディ が催される。
そして万学博覧会には 特別企画 がある。これは、5つの企画の束である。 SFCからパリ2024オリンピック・パラリンピックへ (オリンピック・パラリンピック特設ページ もある)、 SFCと災害復興支援 (協力 陸上自衛隊) 、 共につくる健康と文化の森とSFCの未来 (藤沢市特別展示として 「キャンパスカントリー」------藤沢市のまちづくりとSFCの取り組み------ もある)、 まちづくりアイディアコンテスト2024 (共催 藤沢市、藤沢市健康と文化の森地区土地区画整理組合、株式会社フジタ)、 政策・メディア研究科創設30年記念トークセッション (主催 SFCフォーラム )だ。
それから万学博覧会期間中の食事 も重要だ。期間中、学生食堂やローソン、サブウェイ、ソルトダイニング、レディーバードで食事ができる。そしてキャンパス内を循環して走っているバスにのって、湘南慶育病院前に行くとキッチンカーがまっている。
いま、「学際的」、「領域横断的」な学問の重要性が様々な場面で唱えられている。私たちがいま生きている世界は、これまで共有してきた価値や利益が大きく流動し、人々が課題として捉える問題のかたちが大きく流動している。この変化を的確に捉え、変化に適応するために、既存の学問の枠組みを再考する発想の重要性が、あらためて指摘されている。キャンパス創設の1990年は、いわゆる冷戦構造が流動する時期にあった。いま、ポスト冷戦の構造が流動しはじめているいま、再び注目を集めている。
「学際性」や「領域横断的」な学問は、思いもしないところにある。そうした新しい課題と新しい学問を探し出し、その解決のために力を尽くす、という熱量がSFCの魅力であり、存在意義である。万学博覧会は、この魅力を来場した皆さんにご覧に入れようとする機会だと考えてほしい。
例えば(この場で自分の取り組みを披瀝することをあまり好まないが)、万学博覧会において私がかかわる 万学博覧会特別企画 の SFCと災害復興支援 もそうである。この企画は、陸上自衛隊との共催だ。防災、災害復旧、災害復興という課題は、様々な領域の学問が緊密に互動しなければ解決できないことはよく知られているが、そうであるがゆえに、この課題に取り組んでいるSFCに所属する教員は少なくない。そうしたなかで、SFCからは遠いところにあるように見えるアクターと共催することにした。主たる任務として国の防衛を、従たる任務を災害派遣と国際平和協力活動と定めている自衛隊と共催とすることで、防災、災害復旧、災害復興にかかる問題についてのSFCにおける教育研究の特徴をより可視化できると思うし、近年、激甚化する風水害や地震災害など、自然災害についての理解を深めることができる、と考えている。防災、災害復旧、災害復興のみならず、安全保障もまた学際的、領域横断的な学問だ。
また、藤沢市民講座 において私は 「流動する国際秩序と『大国』中国:日本は如何に向き合うか」 と題する講座を担当する。担当するのは「学際性」や「領域横断的」な学問として中国研究を位置づけようとする思いからだ。当日の私は、大きく流動する国際政治という文脈のなかで、国際秩序の変動を牽引する中国を把握する視座を語る。しかし、もはや中国を理解するという学問は、学際的で領域横断的な営みになっている。かつて中国研究は、中国語を話すことができ、中国に長期に滞在した経験のある研究者だけが独占する学問だったかもしれない。しかし、中国はいま、そうした閉じられた学問空間にはいない。未来の私たちの生活、世界の秩序を考えるときに、中国の存在を無視することはありえない。「中国」は、みんなの研究対象になった。万学博覧会の枠組みで中国の政治外交を論じるイベントを設けたことの意味は、SFCは、私たちの未来を左右するかもしれない中国について、学際的に、領域横断的に捉える教育研究の環境を備えたキャンパスだ、というメッセージでもある。
なにはともあれ、この週末は、是非、キャンパスに足を運んで、SFCをまるごとつかみ取ってほしい。美しいキャンパスの秋色のような「学際性」や「領域横断的」な学問の姿を鑑賞して欲しい。
読者の皆さんに共有したいことがあります。
大学名誉教授(総合政策学部)で、元 常任理事・元 総合政策学部長 の阿川尚之先生が、2024年11月12日に逝去されました。阿川先生は、この「おかしら日記」の執筆者でもありました。SFCを共に創る同僚は、先生の言葉を求めて「おかしら日記」を読み返すでしょう。私はこれ とこれ をよく読みます。SFCは、阿川先生が記された言葉を心に刻み、歩み、道を創ります。ありがとうございました。