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2025.03.25

華麗なる冷酷|総合政策学部教授/元常任理事・元総合政策学部長 國領 二郎

リスクをとってイノベーションを起こすことが出来ない組織は時代に取り残されて滅びる。特にSFCのような条件不利地にある組織にとっては、常に新しいフロンティアを開拓しないと生き残れない。他方、顕在化した時にカバー出来ないリスクをとるのは阿呆のやることだ。やり続けているといつか破綻する。

だから組織の能力限界はおかしらのトラブル対応能力で決まる。無能だとリスクが怖くて挑戦したいメンバーにやりたいことをやらせて上げられない。SFCのように多士済済の組織でメンバーの能力を活かせないのは犯罪に近い。

面倒なことに、イノベーションはほぼ必然的に従来のルールを逸脱する。だからおかしらは時に政策的な判断をして、既存のルールでは許されない挑戦を出来るようにしてあげないといけない。

出来るようにして差し上げる作業の中には、機関決定の手続きが含まれる。それを怠ると事務組織がついてこられず何も実現しない。リスクを嫌う日本の組織文化の中で例外を認める機関決定をするのは大変な労力を伴う作業だ。利害関係が複雑な時には権謀術数を駆使しなければならない時すらある。しかし、その手間を惜しんで事なかれ主義を決め込んでいると、メンバーはやる気を失っていく。それはゆっくりとした自殺行為だ。

だからおかしらは既存のルールや公平性を言い訳にして逃げてはいけない。メンバーのために殻を破って道を拓いて差し上げることが出来ないおかしらは組織にとって邪魔どころか害だ。

逆にだめと判断したことについては、努力に最大限の敬意を表しつつ渡すべき引導を渡さないといけない。さもないと宙ぶらりんになったメンバーは不完全燃焼のまま次に進めない。不満分子の幽霊が徘徊する組織になってしまったら皆不幸だ。

時には冷酷さが必要だからこそ、選挙でおかしらを選ぶことに意味がある。選ばれたおかしらや政治的にアポイントされた補佐は民意を盾に覚悟を固めて指導力を発揮しなければならない。とはいえ、どんなに有能なおかしらでもキャパに限界があるし、組織のリスクカバー力にも限りがある。だから応援する対象を選別せざるを得ない。それはとても孤独で苦しいことだ。しかしやらねばならない。

苦しくてもそれを顔に出してはいけない。おかしらが不景気な顔をしてるとメンバーが不安になって組織の活力が落ちる。自信なくても信念ありげに前向きにビジョンを語っていなければ受験生も集まらず寄付も集まらならない。いつもにっこり華麗に。

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そんなことを考えながら学部長や常任理事をやってきました。呼応して下さった方々のお力でそれなりの成果は出して来たと思います。しかし、こんな奴がいつまでも組織にいて影響力を残すと老害になるだけだとも思います。だから(創設に深く関与した)「使える」一部の教員だけ定年後も残れる仕組みに自分がのってはいけないとも考えてきました。

そんなわけで私は先に進みます。こんなひどい奴なのに仲良くして下さってありがとうございました。

SFCのことを愛しています。ですから、これからもお手伝い出来ることがあったら外からしますので、声をかけて下さい。最後に現役のおかしらが時に乱暴にものごとを進めようとしていても大きな目で見てあげてください。おかしらはいい人なだけじゃ務まらないんです。

さようなら

國領 二郎 総合政策学部教授/元慶應義塾常任理事・元総合政策学部長  教員プロフィール