高校時代、SFCに行くのは変わり者だけという印象もありました。
慶應義塾高校時代からプログラミングにのめり込み、周りの情報系志望の学生に合わせて理工学部に内部進学。最初の年はPenmarkというスタートアップ企業でエンジニアとしてモバイルアプリの開発に従事しました。慶應義塾大学には、第2学年編入学試験で学部編入にチャレンジできる選択肢があります。スタートアップで働きながら大学に通った1年生の経験から、ひょっとしたら自分にはSFCの方が向いているのではないかという考えも強くなっていました。
高校時代の友人がSFCのユニークな特徴について教えてくれました。必修科目がほとんどなく、カリキュラムを自由に組めること。私と同じように学外の活動に取り組んでいる生徒が多いこと。テキストを読み込んで独学するのが好きな自分にとっては、SFCの方がより体系的に情報科学や情報工学を学べそうだと考えて編入を決めました。高校時代、SFCに行くのは変わり者だけという印象もありました。でも今では、自分自身がそんなSFCにぴったりの変わり者なのだと自覚しています。
大規模自動運転やスマートシティを一日でも早く実現するのがいまの目標です。
現在取り組んでいるテーマは、「次世代型ロボット・自動運転車用データシステム」。自動運転に必要なプログラムを作るには、一車両に搭載されたカメラやセンサーから送られる一日あたり4TBという膨大なデータを処理し続けなければなりません。今ではクラウド技術が全世界で標準となりましたが、このような膨大なデータを高速に処理するには、エッジコンピューティングの技術が不可欠のものとなります。まもなく産学共同で始まる研究では、川島英之研究会のデータベース技術がコアとなって活用されます。
この研究の第一歩として、私たちは代表的なロボット用ミドルウェアにデータベースの技術を応用することで、より多くのリクエストを適切に処理できるようにする研究を行いました。これにより、既存手法と比べ圧倒的なパフォーマンスを実現できることがわかりました。データベースの技術をロボット用ミドルウェアに応用した研究はこれまでには無く、この研究はロボット分野におけるトップ国際会議にて発表されました(Yushi Ogiwara, Ayanori Yorozu, Akihisa Ohya, and Hideyuki Kawashima. Transactional Transform Library for ROS. IROS2022)。
高校生の時から、情報技術関連の書籍を通して専門知識を学んできました。SFCでも理工学部や他大学のカリキュラムを参考にしながら教科書を読み込み、実社会での応用例やニッチな話題などは講義でキャッチアップするスタイルです。自由なカリキュラムのおかげで、効率よく専門分野への理解を深めることができました。また、学外との柔軟な連携もSFCらしさのひとつです。川島英之先生のつながりで、筑波大学知能ロボット研究会を訪ね、実機のロボットをお借りして研究に取り込みました。
スマートフォンというプラットフォームが多様なアプリ開発を促進したように、大量のデータを効率的に、そして安全に処理できるデータシステムをいち早く提供することにより技術革新が加速すると、私は確信しています。現在の研究を続け、大規模自動運転やスマートシティを一日でも早く実現するのが当面の目標です。
研究室紹介
キーワード:データプラットフォーム、トランザクション、AI、コンピュータサイエンス
データは知の源泉であり、ブラックホール可視化、ゲリラ豪雨予測、GPTを実現しました。このようなサービスを提供するGAMMA(Google, Apple, Microsoft, Meta,Amazon)等のデータ企業には莫大な富が集積されており、サービス実現にはコンピュータサイエンスに基づくデータプラットフォームが必要不可欠です。これに関する最先端研究を我々は多数の企業、研究所、大学と連携しながら遂行しており、トランザクションを中心にして世界トップレベルの成果を挙げています。