社会科学研究をSNS空間に広げるため、インターネット研究に強く学際的なSFCへ
慶應義塾大学大学院社会学研究科の修士課程を修了し、IT企業に務めながら個人の研究を続けていました。ある日、性的な自撮りをTwitterに投稿している若い女性ユーザーをたまたま見かけて興味を持ちました。「危険だ」「けしからん」という親世代の視点だけではとらえきれない、新しい社会的背景があるのではないかと感じたのです。このようなアカウントを分析することで、現代社会におけるプライバシーの感覚や性規範の変化が理解できるのではないかと考えました。
現実とは異なるコミュニケーションがおこなわれているSNS空間で、情報社会論やジェンダー論などの研究を進めるには、インターネット研究に特化した環境に身を置くのが近道だと考えました。そこでSFCの博士課程に進学し、サイバーセキュリティを専門にしながら情報社会論にも詳しい土屋大洋教授の研究会に入りました。
柔軟なカリキュラムで仕事と研究を両立し、高度な在野研究の礎を築きました
SFCには様々なバックグラウンドや経験を持った学生が集まります。心理学の森さち子教授や、警察庁から出向している小笠原和美教授に副指導をお願いしており、幅広い分野の先生に指導を仰げるSFCのメリットを実感しています。またSFCの博士課程は取得単位数が定められていません。指導教官の授業をひとつ受講すれば在籍できるという自由度の高いカリキュラムなので、IT企業での勤務と両立しながら研究が続けられます。コロナ禍でキャンパスが立ち入り禁止になってしまいましたが、オンライン授業への切り替えなども迅速でした。
情報社会論だけでなく、ジェンダー論、若者論などの文化社会学的な関心を織り交ぜながら学際的な分野を切り開いていくのが新しい目標です。大学院と企業での経験を活かし、修了後はアカデミズムと社会を繋ぐ在野研究を目指しています。民間企業とも関係を保ちながら、さまざまな機関で利用できるデータ提示などの役割も果たしたいと考えています。