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アルゴリズミック・クチュール

政策・メディア研究科 後期博士課程3年
川﨑 和也

所属プログラム:エクス・デザイン(XD)

人間社会の根源的な再構築を目指し、ファッションと環境問題を問い直す

 新潟から大学進学で上京した2011年に、震災後の東北を訪ねる機会がありました。衣食住の根幹が崩れてしまう現場を目の当たりにし、生活や社会の再構築に根本から関わりたいという思いが強くなりました。そこで通っていた大学を退学し、SFCに受験しなおしました。

1年目の冬から、デザインとファッションが専門の水野大二郎先生(現在は京都工芸繊維大学大学院特任教授)に指導を仰ぎ、人々の日常生活と加速度的に変化する技術や社会問題との接点を探るような創造のイメージを追求してきました。原則を問い直すような学びが得られたのは、エクス・デザインというプログラムのおかげです。今の指導教員である脇田玲教授をはじめとして、工学から芸術まで多彩な領域の教員が揃い、テクノロジーと哲学がカオスのように交錯する場です。デザインとは上辺の美観だけでなく、問題解決を志向した設計思想そのものなのだと知りました。

問題を解決するだけでなく、大きな問題を提起して回収するのもデザイン研究の使命です

ファッションによる環境問題の解決を目指し、微生物由来の素材に着目しました。バイオテクノロジーとファッションは、ほとんど前例のない異分野の組み合わせです。微生物について生物学の先生に助言を求めたり、デジタル工作機器などでプロトタイプを実制作したりできるのもSFCの強み。多分野の教授陣に支えられ、学外の発表もサポートしてもらいました。おかげで修士課程在籍時に、研究者の登竜門となる重要なアワードをいくつか受賞しています。リスクも込みの「ヤバい」研究を、ここまで手厚く支援してくれる大学は他にないでしょう。エッジの効いた研究がやりたい人には、SFCの大学院を強くおすすめします。

一般的にデザインの目的は問題解決ですが、アカデミックな研究には問題提起の視点も必要。これまでのプロトタイプは、できるだけ遠くの未来に向かってボールを投げるような活動でした。でも自分で投げたボールは、いずれ拾いにいかなければなりません。博士課程まで続けてきた研究を、スペキュラティヴ・ファッションデザイナーとして社会実装するのが次の目標です。

作品名:AUBIK
作者:Synflux + HATRA

作品名:XENON
作者:Synflux

作品名:Algorithmic Couture
作者:Synflux

研究室紹介

脇田玲研究室

キーワード:ビジュアライゼーション、幾何モデリング、スマートマテリアル

研究内容:脇田玲研究室の主要な研究テーマは、目の前にありながらも知覚することができない自然界の情報を可視化/可聴化/物質化することで、世界の見方を新しくするメディアを作り出すことです。作業の中心になるのはプログラミングやコーディングと呼はれる行為であり、ソースコードにデザイン思考のエッセンスを見出します。現代の高速なコンピュータと数学を駆使することで、人間の知覚能力はより繊細に拡張できるはずです。脇田研では、空気、音波、熱などこの世界に満ちている様々な流れの生態系を知覚できるメディアを開発していきます。