域学連携による持続可能なまちづくり
その取り組みの成果と課題を検証する
上森 裕美 Hiromi Uwamori
学部:総合政策学部4年
出身校:湘南高等学校(神奈川県)
私は飯盛義徳研究会の一員として、2012年から14年3月まで、三重県尾鷲市4集落にて、住民主体のまちづくりをテーマにした「三重県尾鷲市元気プロジェクト」に参加しました。
学生が活動から離れる中で、現地の活動の様子に違いが出てきたことから、プロジェクト期間内において、何が活動の継続につながったのか? その継続要因を明らかにする仮説構築型の研究として取り組んだのが、「持続可能な住民主体のまちづくりに関する研究―三重県尾鷲市元気プロジェクトを事例にインセンティブ設計の視点から探求する―」です。研究のベースとなる尾鷲市元気プロジェクトでは、私がリーダーを務め、現地では4集落で、それぞれ土産物店や弁当店の立ち上げと運営、ホームページ開設、郷土料理のレシピ本制作を行いました。
その後の状況の検証では、いずれの事業についても、学生が離れた後も活動が地域で継続されており、域学連携の可能性と課題を知ることができました。
地域の人々の意欲を高めていたのは
人間同士のコミュニケーション
学生が活動から離れた後の、4集落の活動の様子を詳しく調査すると、観光客向けの土産物店や、地元の人向けの弁当店など、直接的に利益を生み出せる取り組みは、特に良好な事業として継続されていました。
これをさらに分析してみると、弁当や土産物などの販売を通し、観光客や地域の人々と直接コミュニケーションが生じる事業ほど、取り組む地元の人たちのやりがいを高めていることが分かりました。一方で、ホームページ開設やレシピ本の制作は、完成してしまうと、主な活動がそれによって完結してしまうという点で、持続の可能性や取り組む住民の意欲について、他の取り組み比べると差異が出ていると思われました。
振り返ると、三重尾鷲市元気プロジェクトでは1年半の間、何度も現地に足を運び、住民の皆さんと厚い議論を交わしながらプロジェクトを推進しました。さらに、自分が関わった活動のその後を研究対象にすることができたことも、SFCでの学生生活の貴重な体験であり思い出になっています。