自分のポテンシャルを、気象学で引き出す
小野 稜平 Ryohei Ono
学部:環境情報学部4年
出身校:川和高等学校(神奈川県)
新たに見つけた学びのフィールド
私にとってSFCは、それまでにない新たな学びのフィールドでした。自分でやりたいことを見つけなければいけない。フィールドワークなど型にハマらない、自由さがある。やるかやらないかは自分の責任。私に一番合った環境だと思いました。
気象学を研究するきっかけは、気象学が専門の宮本佳明先生の授業を受けたことです。私は幼い頃から、海で遊んだり、空を見上げたりする中で地球の不思議さを感じていました。大災害につながる自然の脅威を目の当たりにする中で、環境に興味を持っていました。先生との出会いをきっかけに自分の興味を再認識し、2年生の春から宮本先生の気象学研究会に所属しました。
台風縁辺域でも安全かつ効率の良いフライトへ
研究テーマは「台風と乱気流の関係(台風縁辺域における乱気流発生の可能性)」です。台風縁辺域では、最適な飛行ルートが明らかになっていません。そのため現状、航空機は赤外画像や水蒸気画像といった衛星から撮影されたデータをもとに、目に見える雲を大きく避けるように飛行します。しかし乱気流は空気の流れが少しずれるだけで生じるため、台風から遠く雲がなくても揺れる可能性がある一方で、反対に雲がある域だったとしても揺れが小さい可能性もあります。
そのような「定量的な予知が難しい大気の撹乱」を、気象データの解析で明らかにしたいです。結果として最適な飛行ルートを提案できれば、乱気流のメカニズムを解明できるだけでなく、安全な人の移動や物流の確保、燃料の消費抑制に貢献するなどの社会的意義が見出せます。
本研究は「山岸学生プロジェクト支援制度」に助成いただき、実施しました。研究背景やその先のビジョンから、社会へ応用可能性のある研究として評価していただきました。1年目の成果を活かした2年目の計画も採択していただき、研究を進める支えになっています。
人と自然の共生も見据えて
気象の応用的な研究領域では、台風の勢力を弱める研究も行われています。しかし、私は気象に干渉しすぎないことも大事だと考えています。例えば、海面温度の上昇から珊瑚礁を守る自然界のメカニズムが存在します。夏に異常な高温になった海水が台風の通過でかき混ぜられ、冷まされるからです。自然の制御というのは、環境への負のフィードバックもあるのです。
ただし強大な台風は、私たちのインフラに大きな被害をもたらします。生活に直接的な関係があることも事実です。人と自然の共生を見据えて、私たちが暮らしやすいと感じる部分と、自然が自然に存在できる部分を両立させるためには、気象の基礎的な研究の重要性も感じています。
教員と学生は研究パートナー、質の高い学び
SFCでは教員と学生は研究パートナーの関係にあります。私は、その距離の近さを、当初は教員と学生を結び授業をサポートするSA(Student Assistant)の経験で感じました。研究会においては、学生は一人の研究者として教員から学び、教員も学生のフレッシュな発想から学ぶ、といった印象があります。そのような関係にあるからこそ、質の高い学びを得られるのだと思います。現在、気象学研究会でSAのリーダー的な役割を担う私にとって、さまざまな授業でのグループワークや授業SAの経験で身につけたコミュニケーション能力も活かすことが出来ています。
また、理系学部のフィルターを通さずに文理融合の研究が行えることも、SFCの特長の一つです。例えば研究会メンバーのテーマを挙げると、「気象と労働生産性の関係」や「気象と美容の関係性」、「国により"いい天気"の定義は違うのか」など、「気象」×「〇〇」といった従来の気象学の考えの枠にとらわれないコラボレーションが生まれる環境です。幅広い分野を網羅していることはもちろん、多様なバックグラウンドを持つ人が集まっているからこそだと思います。
コロナ禍でも学びを止めない努力と工夫
SFCはオンライン授業への移行が迅速でした。それは、多方面で話題になった脇田玲・前環境情報学部長のメッセージに代表されます。「家にいろ。自分と大切な人の命を守れ。SFCの教員はオンラインで最高の授業をする。以上」。コロナ禍にあっても、教員の意識は「学生の学びを深めるにはどうすればいいか」という方向で統一されていることが表れており、実際にそれを体感しました。アクティブに関われるように。学生側からも発信できるように。単なるオンライン授業ではなく、「オンラインだからこそできる」授業もあり、先生方のさまざまな努力や工夫がうれしかったです。
学びの行き先はSFCで見つけよ
必修授業が少ないなど「自由」であるからこそ、自分の興味のあるさまざまな授業を通して、自分のポテンシャルを引き出すことができる場所がSFCだと思います。私自身、研究だけでなく、たくさんの教員・学生に出会いそれを体感しました。
今はやりたいことが見つかっていなくても、何かを深めたい、スペシャリティを身につけたいという強い思いを持っている人、あるいは何かにガッと集中できるタイプの人。そういう人がSFCに向いているのではないでしょうか。興味のあることに積極的に触れて、多くの気づきを得ながら、自分の学びの行き先を見つけてください。