総合政策学部 井庭崇研究室、環境情報学部 大木聖子研究室は、大地震への備えと地震発生時の迅速な行動を促すためのパターン・ランゲージ「サバイバル・ランゲージ」を制作しました。
サバイバル・ランゲージは、地震への備えや地震発生時のよりよい行動について考え、コミュニケーションをはかり、実践するための新しいタイプの防災支援ツールです。
防災の実践的な知恵を「小さな単位」にまとめ、それに覚えやすい名前をつけています。このような工夫により、ひとつひとつの知恵を自分の生活に取り入れたり、語り合ったりすることがしやすくなることが期待されます。地震発生時においても、迅速な意思決定や行動ができるように、印象に残りやすい言葉やイラストにしています。
サバイバル・ランゲージは、「パターン・ランゲージ」という記述形式で書かれています。つまり、ある「状況」でどのような「問題」が生じやすく、それをどう「解決」するとよいのか、という実践の知恵がまとめられているのです。そのひとつひとつの知恵を、専門的な呼び方で、「パターン」といいます。
具体的に例を挙げると、例えば「備蓄の普段使い」というパターンでは、大地震のための食糧と飲料水の備蓄についての知恵が書かれています。大地震に備えたとしても、大地震がすぐに来るとは限らないので、備蓄した食糧や飲料水が古くなってしまうことがよくあります。それでは備蓄した意味がありません。そこで、食糧や水を多めに購入しておき、それらを普段から使いながら補充していけば、常に新しい備蓄を確保することができます。
もう一つ例を挙げると、「家具より命」というパターンでは、地震発生時には家具は押さえずに、そこから離れるように、ということが書かれています。地震が起こると多くの人がとっさに家具を押さえます。しかし大地震の強い揺れでは、家具を人間が押さえることなどまずできず、下敷きになる可能性があります。地震の時は家具を押さえようとはせず、すぐにそこから離れることが大切なのです。もっと言えば、そもそも家具は固定しておけばよいのです。家具の固定には効果を高める方法とそうでない方法があります。これらもサバイバル・ランゲージに収められています。
このように、サバイバル・ランゲージは、地震への備えや、地震発生時の行動についての知恵を、小さな単位でまとめたものです。そして、その小さな単位のパターンに、「備蓄の普段使い」や「家具より命」というような、覚えやすく印象に残りやすい名前がつけられていることにも特徴があります。これらの言語化によって、個々人が記憶・想起しやすくなるだけでなく、防災のコミュニーションも活性化されることが期待されます。
●サバイバル・ランゲージは、2013年11月22日(金)・23日(土・祝)に東京ミッドタウンで行われる「慶應義塾大学 SFC Open Research Forum (ORF) 」にて展示・発表します。
B04ブース(井庭崇研究室)
「創造社会へのパスポート – 状況に応じて臨機応変に行動する」
ORFについての詳細は、http://orf.sfc.keio.ac.jp/ をご覧ください。
●「サバイバル・ランゲージ」ホームページ: http://ilab.sfc.keio.ac.jp/survival/
井庭崇准教授のコメント
サバイバル・ランゲージの制作でいつも考えているのは、「防災はデザインである」ということです。つまり、防災を「決められたやり方に従うもの」だというのではなく、各人が「自分で自分の状況に合わせて“デザイン”すること」だと捉えるのです。例えば、備蓄について考えることは、自分の生活のサイクルを“デザイン”することです。また、家具の固定の仕方について考えることは、自分の生活空間を“デザイン”することの一部です。そして、地震発生時にどのような行動をとるのかも、瞬時の意思決定という“デザイン”行為だと言えます。サバイバル・ランゲージは、そのような各人の「防災のデザイン」を支援するために作成されました。まだ始まったばかりのプロジェクトなので、これからも新しいメンバーを募りながら、さらに多くのパターンをつくっていきたいと考えています。
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