初代環境情報学部長である相磯秀夫名誉教授ならびにジョン・L・ヘネシースタンフォード大学名誉学長の2016年度大川賞受賞を記念してシンポジウムが開催され、「コンピューティングの進化と研究大学の役割」と題して、受賞記念特別講演とパネル討論が行われました。
相磯名誉教授は「コンピュータサイエンス関連分野における研究・教育の体験 ~コンピュータアーキテクチャの研究から大学改革まで~」という題目で講演され、大学時代やイリノイ大学での体験に基づく教育における「知の世界の新鮮な驚き」や「知る喜び」の重要性、日本発の実用トランジスタ・コンピュータをはじめとした多くのコンピュータアーキテクチャに関する研究開発からの教訓、慶應義塾大学での研究教育や大学改革を通じた「学生の個性を尊重し伸ばす」「問題発見・問題解決能力の育成」といった数多くの教訓を語られました。
第2部では、「コンピューティングの進化と研究大学の役割」についてのパネル討論を「The End of Road for General Purpose Processors and the Future of Computing」について講演されたヘネシー博士とともに、徳田英幸環境情報学部教授の司会で行いました。AI技術が注目され発展が期待される中での創造性や倫理感などAIには依然欠け、人間のみが持つ要素の重要性、AIも含めたICT関連産業の垂直的統合の時代に向けた大学・企業それぞれにおけるパラダイムシフトの必要性、個性を伸ばし多様性を認める大学教育研究の重要性、イノベーション・エコシステムの最前線としての研究大学の役割などが議論されました。最後にお二人から"Take Home Message"として、エネルギーを持った若者のハードワークへの期待、パイオニアたらん「自我作古」の精神についてお話し頂き、閉幕となりました。
会場は満員となる400名を越える参加者が熱心に耳を傾け、フロアからも積極的な質問や意見が交わされました。
大川賞は公益財団法人 大川情報通信基金の主催する、情報・通信分野における研究、技術開発および事業において顕著な社会的貢献をされた方の労に報い、その功績を表彰すると共に、情報・通信分野のさらなる発展と啓蒙に寄与することを目的とした国際賞で、1992年度から授与され、今回で25回目となります。
相磯秀夫名誉教授は「計算機システムの研究開発における先駆者として、コンピュータ関連産業の発展に向けた社会的貢献ならびに情報学を基礎とした学際複合領域の開拓及び多くの有為な人材を育成した」として、2016年度大川賞受賞に至りました。
ジョン・L・ヘネシー博士は「RISCプロセッサをはじめとするコンピュータアーキテクチャに関する先駆的研究、ならびに高等教育における指導者としての卓越した貢献」が評価され、同賞を受賞されました。
撮影:井上 悟
発信元:湘南藤沢事務室総務(広報)担当