牛山潤一環境情報学部准教授と鈴木里奈さん(政メ修2)による研究論文が 国際学術誌「Cerebral Cortex Communications」に掲載
牛山潤一環境情報学部准教授と政策・メディア研究科鈴木里奈さん(修士2年)による原著論文が、国際学術誌「Cerebral Cortex Communications」誌オンライン版に2020年10月7日に掲載されました。同誌は神経科学領域でも著名な「Cerebral Cortex」誌の姉妹誌として2020年に創刊された学術専門誌であり、本論文はその記念すべき第1巻第1号への掲載となります。
私たちの身体運動には、どれほど大きな力を込めるか、どれほど速く動くか、どういう順番で課題をこなすか、などさまざまな構成要素が存在します。従来の運動生理学研究では、こうした要素のひとつを切り出し、力なら力、速さなら速さをコントロールする仕組みを個別的に調べるようなアプローチがほとんどでした。しかし、私たちの実生活では、こうした多様な構成要素の兼ね合い、すなわち「運動の文脈」に応じた柔軟な運動の制御が必要であり、ひとつの要素のみで制御の方略が決まるようなことはないはずです。この研究では、運動の開始〜維持〜停止をどのように実行・反復するかといった文脈に応じて、脳と身体はそのインタラクションを変調させながら運動をコントロールしていることを、脳波と筋電図をもちいた生理学的アプローチにより示すことに成功しました。
掲載論文「Context-Dependent Modulation of Corticomuscular Coherence in a Series of Motor Initiation and Maintenance of Voluntary Contractions 」
鈴木里奈さんのコメント
このたびは初の投稿論文が受理され、大変嬉しく存じます。学部2年次に「生理学を学びたい」という思いで牛山潤一研究室に所属し、牛山先生の「とにかく手を動かす」という教えを胸に、同研究に4年間向き合ってきました。ご指導いただいた先生方、実験にご協力いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。そして、忌憚のないディスカッションや、プレ実験に数えきれないほど付き合ってくれた研究室のメンバーにも、心から感謝しています。決して平坦な道ではなく、試行錯誤の日々でしたが、これまでに得た経験はすべて自身の糧となりました。ここで立ち止まることなく、新たな視点も取り入れながら、研究に深みを出していきたいと思います。
牛山潤一環境情報学部准教授のコメント
国際学術誌の創刊号への掲載という経験は、一生に一度あるかないかのとても貴重なものです。こうした経験を学生とともにできたことを誇りに思います。コロナ禍の厳しい状況下でもこうした成果を輩出できたのは、毎日当たり前のことを当たり前に積み上げることのできる、鈴木さんの揺るぎない向学心の賜物です。人間がどのように自身の運動をコントロールしているのか、どのように新しい運動を学習していくのか、身体運動の神経科学の分野はまだまだ分からないことだらけです。本研究のような基礎的な知見をひとつひとつ丁寧に積み上げることが、将来、スポーツや芸術活動などの技能の向上や、失われた身体機能の回復のために役立つことを信じて、これからも学生たちとともに研究道を邁進していきたいと思います。
発信者:湘南藤沢事務室 総務担当