鶴岡路人総合政策学部教授が、第47回「サントリー学芸賞 政治・経済部門」を受賞しました。
公益財団法人サントリー文化財団は、広く社会と文化を考える独創的で優れた研究、評論活動を、著作を通じて行った個人に対して、「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分けて、毎年「サントリー学芸賞」を贈呈しています。
1979年の本賞創設以来、第47回(2025年度)までの受賞者は395名を数え、これらの受賞者の業績は、主題への斬新なアプローチ、従来の学問の境界領域での研究、フロンティアの開拓などの点で高く評価されています。第47回は2025年12月8日に都内で贈呈式が開かれました。
受賞著書
模索するNATO─ 米欧同盟の実像鶴岡路人著
はじめての戦争と平和
鶴岡路人著
鶴岡路人教授の受賞者挨拶(贈呈式)
鶴岡路人でございます。大変に素晴らしい賞をいただき、関係者の皆様にあらためて感謝いたします。
今回は、2冊を対象にしていただきました。ただし、ご挨拶の時間は2倍にならず、3分のままですので、2倍の速さでいければと思います。
『模索するNATO』と『はじめての戦争と平和』は、分厚い専門書と入門編の新書というように、性格の大きく異なる2冊です。それでも、リアルな国際政治・安全保障像、そして「世界を読み解く」、「分析するとは何か」などを追求する観点で、共通点があります。
お手元の冊子の「受賞のことば」では、2冊は「補完的な関係」にあるとも書きました。しかし、それは後付けです。受賞のご連絡をいただいた後に考えました。今回の受賞は、2冊の関係を著者自身が改めて考えるきっかけにもなりました。ありがたいことでございます。
さて、我々のまわりでは、トランプ政権の動向が日々ニュースになっています。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すとも言われ続け、国際秩序の崩壊が議論されています。ロシアによるウクライナ全面侵攻も残念ながら続いています。現実から目を背けたくなるほどかもしれませんが、そうもいきません。それでも、翻弄され過ぎるのは避ける必要があります。
歴史や制度などを勉強し、特定のトピックに詳しくなることは重要です。それ自体、知的にも幸せな営みです。ただ、加えて強調したいのは、物事を構造的にとらえ、確固とした立脚点に基づきものごとを自ら読み解くことができるようになると、世界がまた大きく広がるということです。荒れる世界を前にしても、慌てずにすみ、判断を誤ることも少なくなります。これが、自ら世界の読み解き方を身につけ、自ら分析できるようになることの個人的な効用です。そしてそのような人が増えていけば、社会の議論も変わっていくはずです。
サントリー学芸賞は50歳までが対象と聞いております。発表の日にその歳になりまして、最高の1日でした。ありがとうございました。しかし、本当にギリギリでした。同時にこの賞は、新進の研究者の今後の研究を奨励するという趣旨だと理解しておりまして、なかなか心苦しいところです。ただ、上限の歳でいただくからには、これからの研究などと悠長なことは言っていられません。奨励としてお受けするというよりは、学芸の維持・発展に貢献せよとの、いわば司令書として覚悟を固めることにいたします。
研究者としては英語の査読論文がより重要だとの声もあります。しかし、日本語による学芸出版の伝統をいかに守り、発展させられるか。そのためには読者として本を読み続ける、ないし買い続けることも重要な貢献です。これからも積読の山の成長を見守ります。他方で、書き手としては、よい文章を書いていくしかないとの責任を痛感しております。ちくまプリマー新書で受賞したことで、サントリー学芸賞に関心を持つ中高生が少しでも出てきてくれれば、それ自体、早速貴重な貢献になるかもしれないと、密かに考えております。
引き続きよろしくお願いいたします。本日はまことにありがとうございました。

サントリー学芸賞 受賞者一覧・選評
サントリーニュースリリース「第47回 サントリー学芸賞決定」
模索するNATO─ 米欧同盟の実像(慶應義塾大学KOSMOS)
はじめての戦争と平和(慶應義塾大学KOSMOS)
鶴岡 路人 総合政策学部教授 教員プロフィール
発信元:湘南藤沢事務室 総務担当
